(ブルームバーグ): みずほフィナンシャルグループ(FG)は、辞任する坂井辰史社長の後任に木原正裕執行役(56)を昇格させる人事を固めた。平成入行で初のメガバンクトップとなる木原氏は、金融庁から指摘された企業風土の改革と、ライバルの後塵を拝する収益力の強化という2つの課題を同時に背負うことになる。

  相次ぐシステム障害により、昨年11月に金融庁から業務改善命令を受け、坂井社長やみずほ銀行の藤原弘治頭取が引責辞任を決めたみずほは、業務改善計画の提出期限の17日に後継社長を発表する予定で人選を進めてきた。社外取締役5人で構成する指名委員会(委員長・甲斐中辰夫元最高裁判事)が選考に当たった。

  複数のみずほFG関係者によると、後任候補には、年次や出身行のバランスから旧第一勧業銀行出身の今井誠司副社長が有力視されていた。木原氏の名前も挙がっていたが、1989年(平成元年)入行と若いための経験不足に加え、坂井社長や前社長の佐藤康博会長と同じ旧日本興業銀行出身であることが懸念された。

    しかし、木原氏については一方で、旧世代とのしがらみが少ない点や、リスク管理業務の経験が長いことを評価する声も上がっていたという。木原氏の昇格が固まった背景について、みずほグループのある役員は改革に直面する組織としての危機感の裏返しだと話す。

大幅な若返りで求められる改革

    他のメガバンクでは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の亀澤宏規社長が60歳、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の太田純社長が63歳。みずほFGの次期社長に木原氏が決まれば大幅な若返りとなり、メガバンクで最も若いトップが誕生する。

  みずほFGは2000年の旧3行(興銀、第一勧銀、富士銀行)統合以降、システム障害を繰り返し、21年も9度のトラブルが発生。金融庁は改善命令で、みずほの変われない体質などガバナンス(企業統治)の問題にも言及した。

  SBI証券の鮫島豊喜シニアアナリストは、木原氏について「メガバンクのトップとしては年齢も若く、社内の活性化が期待できる」と指摘。その上で「これまでの経歴からグループ全体を俯瞰できる力はあるのではないか」と述べた。木原氏は、岸田文雄首相の側近の木原誠二官房副長官の実兄でもある。

システム障害が重荷に

  一連のシステム障害でもたつく間に、みずほは市場の評価でライバルに大きく水をあけられた。時価総額ではみずほの約4兆300億円に対し、MUFGが約9兆3000億円、SMFGが約5兆7000億円。21年7−9月期の連結純利益は1351億円と改善したが、MUFGの3984億円、SMFGの2528億円との差は大きい。

  鮫島氏は3メガバンクの時価総額の差について、「システム障害が株価の重しになっている」と分析。「長年の問題を解決できないみずほが投資家から避けられた」とみている。

急がれる信頼回復

    次期トップ人事が報道された翌日の11日、みずほ銀で午前8時ごろから法人向けインターネットバンキングでログインしにくい不具合が発生した。21年の暮れにも他行宛ての振り込みの一部が利用できないトラブルを起こしたばかりで、鈴木俊一金融相は金融庁としてしっかりフォローアップしていきたいと話した。

   モーニングスターのアナリスト、マイケル・マクダッド氏は「当面の課題は、今後これ以上のシステムトラブルを起こさず、規制当局や顧客の信頼を回復するために必要なあらゆる措置を取ることだ」と指摘した。

  ●木原正裕(きはらまさひろ)1989年一橋大法学部卒、旧興銀入行(95年6月、米国デューク大学ロースクール修了)。FGリスクガバナンス高度化PT長、同社常務執行役員、みずほ証券常務執行役員などを経て、2021年7月にFG執行役、現在に至る。

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