(ブルームバーグ): 米国のインフレ連動国債(TIPS)利回りが過去最低水準から急反発しており、債券保有者は損失で打撃を被り、歴史的といえる緩和的金融政策の時代の終わりに備える金融市場に動揺が広がりつつある。

  米連邦準備制度は3月にも利上げサイクルを開始する一方、買い入れ資産の償還に伴う再投資を停止し、8兆8000億ドル規模(約1000兆円)に膨らんだバランスシートの縮小に今年のある段階で着手する可能性が高いとシグナルを発した。これを受け、いわゆる実質金利が今月に入り急上昇した。

  ジャンク債(投機的格付け債)から住宅に至るまであらゆる価格を押し上げてきたマイナスの実質金利から市場は引き離されようとしており、利上げと量的引き締め(QT)の二重苦ともいえる状況は、株式および債券投資家が被った流血が始まりにすぎないのではないかと不安をかきたてる。

  パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のダニエル・アイバシン最高投資責任者(CIO)は「実質金利はこれまでよりもはるかに重要になっている。資産バリュエーションが全般に高騰しているが、それは低い実質金利という事象のおかげだった」と指摘した。

  米国債相場は20日にじり高となったが、それでも10年物TIPSの利回りは昨年12月後半から50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度上昇し、20日時点ではマイナス0.63%前後。昨年11月初めの低水準からマイナス幅が半分程度縮小した。5年物TIPSの利回りもこの間上げ、マイナス1.19%前後となった。

  近く予想される米連邦準備制度の政策転換が、実質金利の持続的上昇局面を告げるものかどうかはまだよく分からず、数十年ぶりの高インフレ抑制に向け金融当局がどこまで積極的に動く必要に迫られるかに左右されよう。

  米資産運用会社ブラックロックの米州ファンダメンタル債券責任者ボブ・ミラー氏は「Fed(連邦準備制度)が金融環境を引き締めるには、極度に緩和的水準から実質金利が上昇する必要がある」と主張。当面はっきりしないだろうが、Fedがバランスシート縮小をどのように進めようとするかによって、目先の上昇ペースが決まってくると分析した。

  ソシエテ・ジェネラルの米金利戦略責任者スバドラ・ラジャパ氏は「実質金利がゼロになれば、株式にとって不安材料になり始める」と警戒。PIMCOのアイバシン氏は、実質金利に今年さらに25−50bpの上昇余地があるとみており、社債と株式にますます下押し圧力がかかることが予想される。

  ラジャパ氏は「実質金利はより着実に上昇する可能性がある」と指摘。市場が織り込むターミナルレート(利上げの最終到達点)に言及し、「はるかに高いフェデラルファンド(FF)金利の最終到達点」を反映することになりそうだとの見解を示した。

(実質金利の最新の数字などを追加して更新します)

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