(ブルームバーグ): ウォール街の債券強気派は年初から打ちのめされてきた。だが、市場のセンチメントは過去1週間にインフレ懸念から成長懸念に顕著な転換を遂げた。こうした状況を背景に、迫り来る経済波乱を乗り切ろうと、債券市場に回帰するつわものも少数ながら現れ始めている。

  市場ベースの米インフレ期待は過去数年ぶりの高水準から鈍化し、米国とドイツ、イタリア、英国の名目利回りは低下した。同時に、4月の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回る伸びとなっても持続的な売りにつながらなかったことは、弱気相場疲れのサインと言えそうだ。

  インフレ高進圧力が世界的な広がりを見せる中で、世界の主要市場のいずれにおいても利回りがピークに達したと確信を持つ投資家は皆無だろう。一方で、米連邦準備制度による積極的な金融引き締めが景気減速を招き、世界の資産全般に影響が波及しかねないことを踏まえれば、債券が引き続き強力なヘッジの手段になるとの議論もある。

  ロンドンを拠点とし債券を専門とするトウェンティフォー・アセット・マネジメントのパートナー、マーク・ホルマン氏は「当社は米国債購入を始めたばかりだ。米国債利回りがこれほどまでに上昇したのはとても喜ばしい」と話した。

  先進国の株式市場とクレジット市場は今月に入り下落に見舞われ、景気動向に敏感な部分が特に売りを浴びる一方、安全資産と見なされる米国債には2020年3月以来の大幅資金流入があった。他方、欧州中央銀行(ECB)の引き締めが始まるのはこれからである点を考えると、このところ急伸しているドイツ国債相場は相対的に脆弱(ぜいじゃく)と言えそうだ。

  それでも、シティグループのストラテジストの場合のように、成長懸念の方が高インフレ予想よりも優勢だとして、当面は独国債売却の動きが反転するとの予想もある。

  BNYメロン・インベストメント・マネジメントの債券マネジャー、ハワード・カニンガム氏は「政府債はリスク相殺の機能を果たし始めることができる」とし、「利回り上昇が反転するとは見込んでいないが、こうした役割を果たし始めることは可能だ。時には株式と負の相関関係となる」と語った。

  ブルームバーグの指数によれば、米政府債相場は年初から12日までの時点で既に8.4%下げ、少なくとも50年ぶりの2年連続下落の方向にある。世界的な指標も12%下げている。ただ、米10年債利回りは5月9日に3.20%と18年以来の高水準を付けて以降、約30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下している。

  一方の株価は、ウクライナでの戦争や中国での新型コロナウイルス感染抑制のロックダウン(都市封鎖)で成長減速への懸念が強まり、急落している。

  デリバティブ(金融派生商品)市場では、ヘッジファンドが米国債の弱気ポジションを解消し、それが利回り押し下げにつながっている様子がうかがわれる。

  しかし、このような状況にあって、ドイツ銀行のプライベート・ウェルスマネジメント部門債券責任者、ゲーリー・ポラック氏は米国債売却の動きはまだ終わっていないと警告。賃貸コストや航空運賃など広範な物価上昇圧力の持続を挙げた。「インフレは鈍化すると予想するが、それが落ち着いた水準に市場が満足するかどうかが問題だ。ここで買おうと言うのを若干ためらう理由はそれだ」と説明した。

Bonds Suddenly Look Like a Smart Hedge Again Even After 12% Loss(抜粋)

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