(ブルームバーグ): 20日公表の4月の全国消費者物価指数は久しぶりの高水準になりそうだ。足元の資源高が主因だが、日本経済に根付くデフレマインドが転換するきっかけになると期待する声もある。

  ブルームバーグの調査によると、生鮮食品を除く全国コアCPIの前年比上昇率は2%が見込まれている。携帯電話通信料の値下げによる影響のはく落もあり、3月の0.8%上昇から一気に上昇率を高め、消費税率の引き上げで上昇した期間を除くと2008年以来の高い伸びとなる。

  日本銀行の分析によると、長くデフレに直面した日本のインフレ期待は現実の物価上昇率の影響を受けやすい。足元では短期のインフレ予想の上昇が鮮明だ。コロナ禍の下で消費機会を失って積み上がった約50兆円の貯蓄の存在も、エネルギー高による家計の実質所得減少を緩和する要素となる。

  雨宮正佳副総裁は17日の国会答弁で、資源価格の上昇がある程度続けば、物価は上がらないという前提で行動してきた企業や家計の物価観が変わる可能性に言及した。「われわれはデフレを退治するためにある程度変わってほしいと思っている」とも述べ、一段のインフレ期待の上昇に期待感を示した。

  三井住友銀行の鈴木浩史エコノミストは、現在が物価上昇に向けた「分岐点にいるというのは楽観的過ぎるが、そこに近づいている可能性はある」とみる。「インフレ的な経済に移行する可能性は近年で一番高いのではないか」と指摘した。

  実際、企業が商品を値上げする動きは相次いでいる。伊藤ハムと米久は原材料や燃料のコスト上昇を受けて、3月からハム・ソーセージなどの価格を引き上げた。伊藤ハム米久ホールディングスの宮下功社長は今月の決算発表で、「今期の原材料高は3月の値上げではリカバーできない」とし、さらにコスト増が見込まれる場合は新たに値上げを検討する考えを示した。

  一方で、値上げをちゅうちょする企業もある。トヨタ自動車の長田准執行役員チーフ・コミュニケーション・オフィサーは決算発表で、日本は景況感や成長率が足踏みしており、「なかなか国民の可処分所得も上がっていかない地域」と指摘。値上げは一部の車種で検討するものの、日常生活の足である軽自動車やコンパクトカーについては「厳しいのではないかと思っている」と語った。

  資源輸入国の日本では資源価格の上昇によって海外への所得流出が起きており、感染症からの回復力が欧米に比べ弱い経済へのマイナスの影響は避けられない状況だ。交易条件の悪化による景気の下押し圧力を緩和し、賃金と物価がともに上昇していく好循環の実現へのハードルは高い。

  今回と同様に国際商品市況が高騰した08年には、コアCPIの上昇率が一時的に2.4%まで高まったが、交易条件の悪化を一因として景気が減速し、インフレ期待がしぼんだ経緯がある。せっかく上昇したインフレ期待を持続させるには、物価上昇が現在のコストプッシュから需要がけん引する形に移行できるかが鍵を握る。 

  今年の春闘では9年連続でベースアップが実現した。連合の集計では6日時点で定期昇給を含む賃上げ率は2.10%と昨年の1.81%を上回るが、ベアは0.62%にすぎない。厚生労働省の統計で現金給与総額は足元で前年比1%程度の伸びにとどまる。日銀の黒田東彦総裁は13日の講演で「生産性と物価の上昇率と整合的で、持続可能な名目賃金の上昇率は3%程度」としたが、現実との隔たりは大きい。

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