(ブルームバーグ): ノーベル経済学賞受賞者の故ポール・サミュエルソンはかつて、株式市場は過去5回の景気後退(リセッション)を9回も予測したと皮肉った。今回は株式市場が正しいかもしれない。

  数十年ぶりの高インフレと金利上昇という重圧の下、米経済には疲れが見え始めており、景気後退のリスクが高まっている。

  ウォルマートやターゲットなど小売企業の暗い業績見通しが投資家の不安感を強め、今週は米株相場が大きく下げた。11月の中間選挙で議会多数派を死守したい民主党のバイデン大統領にとって、こうした傾向は問題になりかねない。

  ガソリンや食品の価格上昇に圧迫されている米国の家計は、生活をやり繰りするため記録的な額の負債を抱えつつある。住宅ローン金利の上昇を受けて住宅建設業者の景況感は暗くなっている。中小企業は事業コストの上昇や人材確保の難しさに悩まされている。

  バンク・オブ・アメリカ・セキュリティーズのグローバル経済担当責任者、イーサン・ハリス氏は、インフレ率は下がるが失業率は上がらないという「完全に穏やかな経済のソフトランディング(軟着陸)は現時点で考えられない」と指摘。「景気低迷もしくはリセッションに向かうだろう」と述べた。

不快なシナリオ

  多くのエコノミストは、米経済には十分な勢いがあるとみている。新型コロナウイルス感染拡大の過程で積み上がった貯蓄のおかげで、自動車や住宅、旅行に対する繰り越し需要が年内は停滞することなく続くとの見立てだ。彼らが景気リスクの増大を見込んでいるのは来年以降だが、その場合でも、景気後退ではなく景気減速というのがコンセンサスとなっている。

  しかし、もっと悪いシナリオを想定する識者も増えつつある。ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は16日付のリポートで「向こう12カ月以内に景気が悪化する確率は3分の1で、24カ月以内にリセッションに陥る確率もほぼ同じだ」と論じた。

  今後の景気動向の多くは、インフレ状況と米金融当局の行動にかかっている。米連邦公開市場委員会(FOMC)は5月の会合で0.5ポイントの利上げを決定。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は6、7両月の会合でも0.5ポイント利上げを行う方針を示唆している。

パウエル議長、「明確で納得できる」インフレ後退まで利上げ継続 (2)  

Cracks in US Economy Start to Show as Recession Warnings Mount(抜粋)

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