(ブルームバーグ):

ESG(環境・社会・企業統治)関連ファンドの成績が二極化している。年初来の運用成績を比べると、資産総額が上位のファンドの大半が苦戦する一方、より幅広い銘柄への分散投資が奏功しプラスの成績を保っているものもある。世界的なESG投資加速の潮流が続く中で、短期的な成績の良し悪しにぶれることなく、投資哲学を貫けるかが試されている。

  グローバル株式に投資する日本のESG関連ファンドのうち、資産総額上位5本を対象に今年1ー5月の成績を調べたところ、4本のファンドで基準価額の下落率が2桁に及んでいることが分かった。

  苦戦の背景には足元の相場環境に起因する特殊要因がある。ESG評価の高い銘柄は一般的に利益成長性が高く、それに伴ってバリュエーションも市場平均より高く評価されるグロース(成長)株が多い。

  アセットマネジメントOneの滝口圭介・ファンドマネジャーによると、金利上昇局面では株式市場全体に対するバリュエーション低下圧力が強まるため、相対的に市場で高く評価されているESG銘柄ほどその影響を受けやすい側面があるという。

  さらに、滝口氏は、一般的なESGファンドでは化石燃料などのエネルギー関連銘柄は除外されるため、同セクターの株価上昇の恩恵を受けにくいと指摘する。地政学リスクの高まりなどを受け、代表的な株価指数「S&P500エネルギー株指数」は今年に入って約50%上昇している。

  滝口氏は「こうした時に踏ん張れるかどうか、ぶれないで哲学を貫けるかどうかが将来の高いリターンにつながるのではないか」と述べ、ESG投資には長期的な視点が欠かせないと強調した。

資産総額上位のESG投信のパフォーマンス(資産総額は5月末)

  5本のファンドのうち唯一、基準価額が上がっているのは、三井住友DSアセットマネジメントの「イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンド」だ。

  同社グローバルパートナー運用部の田中弘幸・プリンシパルは、このファンドの特徴として、組み入れ銘柄が「川上から川下まで」広範囲に及んでいることを挙げる。「運用チームは『生態系』という考え方の下、太陽光や風力といった直接的に脱炭素を想起させるものに加え、そうしたエネルギーを使いつつ移行を試みる企業、その移行をサポートする技術を持つ企業などにも目を配りながら銘柄選択をしている」と話す。

  実際、組み入れ銘柄の数は他のファンドが24から60であるのに対し、同ファンドは75と最も多く、より幅広い銘柄に投資していることが分かる。

  田中氏は、ESGの普及とともに投資対象も広がっており、「自分たちの思うようなポートフォリオが作りやすくなっている」と話した。

  成績の二極化が鮮明になる中でも、ESG投資そのものの勢いが失われるとの見方は少ない。ピクテ投信投資顧問の野中靖・投資情報部長は、原油価格はウクライナ問題がある程度収束したり、サウジアラビアが増産したりすれば落ち着く可能性があるとした上で、仮に高騰が続いても、結果的には代替となる再生エネルギーへのシフトが加速すると読む。

  足元の運用成績が芳しくないファンドは多いものの、野中氏は「テーマやトレンドにしっかり注目し、次の動きを予想しつつ、まずは研究してみるということを地道にやっていくのが一番だ」と話している。

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