(ブルームバーグ):

地方銀行業界にも政策保有株を減らす流れが波及しつつある。上場企業に求められてきた企業統治面だけでなく、大株主の要求や東証市場改革も変化を促すようになってきた。

  地銀の決算説明会では以前から政策保有株に関する質問が多く出ているという。アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは「資本効率の観点から従来企業とのつながりを圧縮する方向となるのは必然だ」とみる。

  メガバンクとは規模で勝てない地銀は融資先や取引先との縁故を重視し株式を持ち合う慣習を大切にしてきたが、潮流は変わった。

  昨年6月のコーポレートガバナンス・コード改革が政策保有株の検証を求めたのをはじめ、東京証券取引所は今年4月に公表したTOPIXの算出変更で流動性の対象から政策保有株を除外した。物言う株主(アクティビスト)が株式を大量保有する地銀には資本効率を求める経営圧力もかかる。

株買い誘う資本効率化の選択で二極化か

  政策保有株の削減を決めた地銀の株価は上がるのか。最近の株式市場を見ると、保有方針を見直した銘柄が値上がりし、他の地銀株にも連想買いが集まっている。

  北国フィナンシャルホールディングスは上場政策保有株全てを原則保有しないと4月に発表し、株価は急伸。年初来上昇率は6月17日時点で70%とTOPIX銀行業指数の構成銘柄で値上がり率は最大だ。今後3年程度をかけて政策保有株の簿価の約10%を縮減すると5月に表明した京都銀行の年初来上昇率は7.9%。80の銀行業指数銘柄の中で上昇率は21番目の大きさだった。

  ゴールドマン・サックス証券アナリストの鈴木広美氏らはリポートで、北国FHDは地銀に特化した投資ファンドとの経営計画に関して助言契約を結び、京都銀は英投資ファンドから特別配当の実施を株主総会の議案に記載するよう求められていたと指摘した。

  背景はやや異なるが、北国FHDと政策保有株の計上額が地銀の中で最大の京都銀の発表は、「今まで緩慢だった地銀による政策保有株式の削減動向に影響を与える可能性がある」と同氏らは分析する。

■政策保有額が大きい地方銀行

  八十二銀行や滋賀銀行、ふくおかフィナンシャルグループなど政策保有株が相対的に大きい地銀の一角も、年初来上昇率の上位10位内だ。一方、政策保有株が大きい銀行であっても、ほくほくフィナンシャルグループのように株価が低迷している地銀もある。

  UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントの居林通ジャパン・エクイティ・リサーチ・ヘッドは「地銀は同じことを延々と行っている」と話す。業界が全体として政策保有株を見直すことには半信半疑との立場をとる。

  居林氏は、地銀経営は株式配当や政策保有株による取引関係に頼る面があることから、今後は政策保有株見直しを「できる銀行」と「できない銀行」とにはっきり分かれるだろうと予想した。

  地銀は地縁を薄めてもマーケットの要請を受け入れるかという踏み絵に迫られる。アイザワ証券の三井氏は政策保有株の見直しは地銀にとって「経営資源をどこに向け、将来の収益の芽を育てるのかの時間軸も市場に問われる」と語った。

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