(ブルームバーグ):

岸田文雄内閣の支持率が各種世論調査で昨年10月の発足以来、最高水準となっている。新型コロナウイルスやウクライナ情勢への対応が評価された。7月の参院選を控え、政府・与党に追い風で、国政選挙の予定がなく安定的に政権運営ができる「黄金の3年」も視野に入る。

  報道各社が5月に行った世論調査で、内閣支持率は産経新聞が68.9%、日本経済新聞が66%、共同通信が61.5%。いずれも政権発足後で最も高く、当初の支持率を維持できずに約1年で退陣した菅義偉前首相とは対照的だ。

  元自民党職員で政治評論家の田村重信氏は、コロナとウクライナ対応に加え、首相が「信頼できる人」というイメージを持たれていることも高い支持率につながっていると分析。安全保障問題に注目が集まる現状も、参院選では自民党に有利に働くとの見方を示した。

  安倍晋三政権で外相、自民党政調会長を務めた岸田首相だが、昨年9月の総裁選時には、国民の人気は河野太郎広報本部長に及ばなかった。発足直後の内閣支持率も菅政権を下回った。

  浮上のきっかけは新型コロナのオミクロン株への対応だ。昨年11月末、外国人新規入国の原則停止に踏み切ると、内閣支持率は上昇。ロシアのウクライナ侵攻が始まると欧米に歩調を合わせた経済制裁を決断したことも支持率を押し上げた。

  日経新聞が5月27−29日に行った調査では、新型コロナで70%、ウクライナ情勢で69%の人が対応を「評価する」と回答している。

  自民党の西田昌司政調会長代理はブルームバーグとのインタビューで、岸田首相について安倍元首相、菅前首相のようなトップダウン型ではなく、周囲を見ながら物事を決める「いかにも日本的な調整調和型」であり、「ものすごい賢い人」と持ち上げてみせた。

  一方、政治ジャーナリストの泉宏氏は、厳しいロシア制裁など「国民受けすることは全部決断する」が、「余計なことはしないで敵を作らない」ことで高支持率を確保している「無策無敵内閣」と語った。 

  岸田政権の懸念材料は物価高だ。岸田首相は国会で、欧米と比較して「日本は影響を抑えている、政府の取り組みは効果が出ている」と主張しているが、立憲民主党は物価上昇を「岸田インフレ」と称し批判を強めている。

  日経の調査でも政府・与党の物価高対策を「評価する」が28%にとどまったのに対し、「評価しない」が61%だった。帝国データバンクが食品主要105社を対象にした調査では、実施済みも含めて年内に計1万品目超、平均13%の大幅値上げが予定される。 

  第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、今後の政権運営に関して「物価上昇に配慮していかざるをえない」と指摘。野党が参院選でバラマキ色の強い対策を主張し、政権としてもさらなる対応を迫られるかもしれないと述べた。

  参院選に勝利し「黄金の3年」を手中にした場合は新しい資本主義も具体化に向けて動き出し、岸田首相のリーダーシップが問われる。ただ、熊野氏は、依然として新しい資本主義の中身が見えにくいとした上で、岸田首相が何をしたいのかについての「強いメッセージがないと長期政権にはなりえない」と語った。

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