(ブルームバーグ): 新興国市場株は2年ぶり安値からの反発が始まったばかりで失速しつつある。米連邦準備制度など世界の中央銀行が経済のソフトランディング(軟着陸)を実現できないとの懸念が背景にある。

  ブラックロックのグローバルチーフ投資ストラテジスト、ウェイ・リ氏は「底入れしたと言うのは時期尚早だ」として、押し目買いが戻る前に、「米金融当局のハト派転換を目にする必要がある」との見方を示した。

  新興国株の指標、MSCI新興市場指数は5月12日に付けた2年ぶり安値から7.3%上昇。月間ベースではここ4年で最長の下落局面を経て、5月はプラスに転じた。ただ、6月に入ってからは、再び先進国の株式に後れを取っている。

  米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先月、インフレが後退していることを示す「明確で納得できる」証拠が得られるまで当局は利上げを続けると表明。3日に発表された5月の米雇用者数は予想を上回る伸びとなり、金融政策支援を解除する動きにもかかわらず、経済への楽観的観測が示唆された。それでもなお、世界経済の見通しを巡る懸念は新興国株のバリュエーションを圧迫している。

  ステート・ストリート・グローバル・マーケッツは今年の新興国株のさらなる上昇はなさそうだと予想。また、ゴールドマン・サックス・グループは、各国・地域の中銀が高騰する物価の沈静化に動く中、投資家の焦点は成長リスクにあると分析した。

  MSCI新興市場指数は今年に入り14%下落し、ストックス欧州600指数とS&P500種株価指数のドルベースのリターンとほぼ一致。中国が新型コロナウイルス対策の制限措置を緩め、大手ハイテク企業に対する規制緩和に動いたとのニュースに加え、安全で安定した銘柄を狙った資金流入を背景に、5月は値上がりしていた。

  iシェアーズMSCI新興国市場ミニマム・ボラティリティー・ファクターETF(上場投資信託)は5月、過去最大となる24億ドルの資金流入を記録。しかし、MSCI新興市場指数と連動する米最大のETFは4億7400万ドルを失い、今年4カ月目の資金流出となった。

  ゴールドマンのストラテジスト、シーザー・マースリー氏は「全ての高リスク資産と同様に、新興国株は政策担当者がソフトランディングの実現を目指す中で狭く厳しい道に直面している。インフレ指標が落ち着けば株式市場への圧力が和らぐのは間違いないが、成長リスクがなお焦点となっている」と語った。

  ステート・ストリートのシニアマルチアセットストラテジスト、ダニエル・ジェラルド氏は新興国株について、わくわくするような長期的見通しがあるとしながらも、「今年後半はそれにはまだ早い。 量的引き締めの影響を確認し、インフレが抑制されているという感触をある程度得る必要がある」と述べた。

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