(ブルームバーグ): 米企業幹部が今後の経済情勢に厳しい見方を示すケースは増えている。だが、市場のエコノミストの間では、なお今年下期(7−12月)の株価上昇を予想し、米国がリセッション(景気後退)を回避できると指摘する向きもある。優秀な統計学者のようにこれを裏付けるデータもそろえている。

  ルネサンス・マクロ・リサーチの米経済調査責任者ニール・ダッタ氏は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)対策の行動制限を経てなお正常化に向かっている分野に言及した。これまで物価を押し上げてきた労働参加率や耐久財需要などの要素だ。生活が今後も落ち着いてくれば、米金融当局はインフレ対策がより容易になる可能性があるという。

  以前から強気派であるダッタ氏は「バランスを取り戻す動きが若干ある。このためインフレ率は幾分鈍化し、実質成長率がわずかに高まる見込みだ。それはいずれもポジティブなリスクだろう」と電話インタビューで発言。「そうした状況が起きつつある中で、インフレは米金融当局の現在の予想ほど力強いものにならず、実際良い感じになるだろう」と話した。

  米金融当局の引き締め姿勢がリセッションを引き起こすかどうかがここ数カ月、市場の見方を支配してきた。市場に広がるセンチメントでその日の方向性が決まることはしばしばだ。

  7日の市場では、米ディスカウントストア大手ターゲットの利益見通し下方修正を除いて新しい材料がほぼなかった。米金融当局者は来週の連邦公開市場委員会(FOMC)を前に発言を控えており、経済統計は10日の米消費者物価指数(CPI)発表まで薄い。7日の株価は不安定な値動きとなる中、上昇して終了し、10年物米国債利回りは3%を再び割り込んだ。

労働市場

  ダッタ氏によると、米労働市場は逼迫(ひっぱく)したままだが、正常化の兆しが既に見える。同氏が引用した全米自営業連盟(NFIB)のデータでは、労働者報酬引き上げ計画が昨年末にピークを付けたことが分かる。

  同氏は「失業率が低い時、雇用の伸びは緩やかな傾向がある。こうした雇用のトレンドは明らかに鈍化している」と指摘。一方、労働力供給は迅速な回復基調にあると見受けられるという。 

  「55−64歳の労働参加率は2020年2月の水準より高く、10代はパンデミック前の水準に戻っている」とした上で、「参加率が上向く余地はまだある」との見解を示した。

耐久財

  消費者向け耐久財価格がパンデミック期に急上昇したのは間違いない。当時、自宅にこもった消費者が新しい食器洗い器や家具を購入するぺースは供給を上回っていた。しかし、こうした状況に変化の兆しがある。

  ダッタ氏は「サプライチェーン問題が緩和すれば、工場はより迅速に製品を出荷できるようになるため、インフレ圧力が低下する見通しだ」と指摘。一方、消費者の行動も変化している。財の消費は1.3%減ったが、サービス消費は1.2%増えた。需要縮小と生産改善が「物価下落につながるはずだ」と分析した。

経済活動

  ジェフリーズのチーフエコノミスト、アネタ・マルコウスカ氏は飲食店予約や小売りのオンライン取引などで構成する米経済活動指数を注視している。同指数は今年の大半の期間で狭い範囲の動きにとどまっていたが、5月に上昇した。

  マルコウスカ氏とトーマス・サイモンズ氏はリポートで、「表面的には、米経済は今年に入り大きく進展していないように見える」とした上で、「しかしよく見ると、経済活動は正常化が進んでおり、指数の構成要素は徐々にパンデミック前の水準に収れんする方向にある」と論じた。

(6段落目以降にエコノミストの見方を追加して更新します)

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