(ブルームバーグ):

5月の米消費者物価指数(CPI)や予想インフレ率の伸び加速を受けて、米金融当局者は14、15両日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、1994年以来となる0.75ポイントの大幅利上げの検討を恐らく迫られる公算が大きい。

  パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は5月のFOMC会合後の記者会見で、経済データが予想通りとなるのであれば、6月と7月のFOMC会合では0.5ポイント利上げが検討対象になるとの見方を示唆していた。FOMCの政策決定は15日午後2時(日本時間16日午前3時)に発表される。

  しかし、この数日間に発表されたインフレ関連統計は予想を上回る展開となり、投資家の間で今週のFOMC会合での0.75ポイント利上げ決定を織り込む動きが広がっていることが、金利先物市場の動向から明らかとなった。

  さらに、FOMCでの大幅な利上げ検討の可能性を示唆する米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の報道を受け、13日午後にはこうした観測が一段と強まった。

  ウォール街では、ゴールドマン・サックス・グループと野村ホールディングスのエコノミストが同日、今週と7月26、27両日のFOMC会合での利上げ幅予想を0.75ポイントに変更。JPモルガン・チェースのエコノミストは今週のFOMCでの利上げ幅見通しを0.75ポイントに修正し、先週のバークレイズとジェフリーズの動きに追随した。

  10日に発表された5月のCPIは前年同月比8.6%の伸びとなり、約40年ぶりの大幅上昇を記録。全ての予想を上回るとともに上昇が広範囲に及び、物価圧力が経済に定着しつつあることを示唆した。

  また、ミシガン大学が発表した消費者マインド指数(速報値)は6月初旬に過去最低水準に落ち込むとともに、5−10年先のインフレ期待は3.3%(前月3%)に上昇し、2008年以来の高水準を記録した。

  このほか、ニューヨーク連銀が13日発表した最新の消費者調査では、向こう1年のインフレ期待(中央値)は5月に6.6%と、4月の6.3%から伸びが加速。13年6月に調査が開始されてからの最高水準と一致した。ただ、向こう3年間のインフレ見通し(中央値)は横ばいの3.9%だった。

  こうしたインフレ期待の不安定化は、賃金・物価上昇のスパイラルにつながりかねず、金融当局には特に懸念すべき事態だ。

  当局が0.75ポイント利上げに踏み切るとすれば、そうした動きを事前に伝え漸進主義を信奉してきたパウエル議長にとって、市場との対話における戦術的シフトを意味する。また連邦準備制度の信認にはプラスマイナス両面の影響が考えられる。

  具体的には、インフレファイターとしての金融当局の信認確保に真剣な姿勢を示すことになる一方、当局の今後の動きを巡り市場の混乱を招く恐れがある。一方で、新型コロナウイルス禍からの景気回復見通しでの当局の稚拙さを浮き彫りにし、信認を損なうことにもなりかねない。

  エバコアISIのクリシュナ・グハ、ピーター・ウィリアムズ両氏は顧客向けリポートで、「金融当局がいったん0.75ポイントで動き始めればストップは困難になり、インフレに対する結果ベースの手法と相まって、リセッション(景気後退)のレシピになりそうだと感じられる」と指摘した。

  なお、15日にはFOMC声明に加えて金利予測分布図(ドット・プロット)など最新の四半期経済予測も発表される。

(0.75ポイント利上げの場合の分析などを追加し更新します)

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