(ブルームバーグ): 日本銀行が17日まで開く金融政策決定会合と黒田東彦総裁の会見では、円安が進行し長期金利の上昇圧力が強まる中で、金融緩和政策やコミュニケーションの修正の有無が最大の焦点となる。イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の誘導目標や資産買い入れ方針など金融緩和策の骨格は維持される見通しだ。

  無風とみられていた今週の決定会合だが、足元の市場では日銀による政策修正観測が再び浮上している。外国為替市場では一時1ドル=135円台と1998年10月以来の水準に円安が進行。米金利高を受けて日本の長期金利にも上昇圧力が強まっており、日銀が上限に設定している0.25%の攻防を巡ってYCC限界論も指摘されていることが背景にある。

  ブルームバーグが3−8日に行ったエコノミスト調査(45人)では、12人が日銀による年内の政策修正を予想した。回答した27人(複数回答可)のうち、「長期金利の許容変動幅の拡大」と「コミュニケーションの修正」をそれぞれ10人が想定している。8人は「政策金利のフォワードガイダンス(指針)の修正」を挙げた。

  日銀は従来の声明文で、政策金利のフォワードガイダンスについて「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」と明記し、「それを下回る水準」は緩和バイアスと呼ばれている。

  市場では、緩和バイアスの文言を取り除く可能性も指摘されている。緩和バイアスの根拠には感染症の影響があり、今会合で新型コロナウイルス感染症に対応した資金繰り支援策の取り扱いが議論され、9月末に予定通り終了する場合は、削除の理由の一つになり得る。

  黒田総裁は「揺るぎない姿勢で金融緩和を継続していく」と明言しており、日銀では利上げなど時期尚早な引き締めは日本経済に悪影響を及ぼすと判断している。若田部昌澄副総裁や内田真一理事は、日銀が上下0.25%程度に設定している長期金利の許容変動幅の拡大は「事実上の利上げ」と否定的だ。

  イールドカーブを低位に抑制するための臨時で多額の国債買い入れが、市場の混乱に拍車をかけている。4月の決定会合では、指し値オペを毎営業日、実施する方針が声明文に明記され、為替市場で円安が加速した。債券市場では市場機能への懸念も強まっており、方針やオペ手法に変更がないか注視している。

  声明文で急激な為替変動のリスクに言及する可能性もある。1ドル=80円を割り込む円高に見舞われた2011、12年には、リスク要因として為替変動を声明文に明記した。

  黒田総裁の会見では、円安や長期金利に関する発言への関心が高い。13日の参院決算委員会で、最近の急速な円安進行は「経済にマイナスで望ましくない」としており、日本経済全体としてはプラスとしていた従来の主張の変化も注目される。

他のポイント

黒田総裁は6日の講演での「家計が値上げを受け入れている」との発言を不適切だったとして撤回した。世論の反発が強まっており、市場には金融緩和の継続に対する黒田氏の強い姿勢に変化が出るかを見極めたいとの声も日銀は、企業の価格設定行動の積極化や家計を含めた予想インフレ率の上昇を変化の兆しと捉えている。賃金上昇を伴った安定的・持続的な物価上昇につなげていくためにも、金融緩和を継続し経済をサポートしていく重要性を指摘している新型コロナ対応の資金繰り支援策の取り扱いは、利用者や金融機関に配慮して予定通りに終了することを早めに決める可能性がある一方、金融政策運営に対する世論の関心も踏まえ、参議院選挙終了後の7月会合まで感染症の動向を慎重に見極めるとの見方も足元のエネルギーを中心としたコストプッシュの物価上昇は、企業収益や家計の実質所得減少を招き、景気の下押し要因となり得る。日銀では、来年の春闘をにらみ、個人消費を中心に内需の拡大を伴った年後半の景気回復の実現を重視している日本経済は中国のロックダウンなどの影響で輸出・生産が下振れている一方、感染状況の落ち着きを反映して個人消費は持ち直しており、「基調としては持ち直している」との総括判断に大きな変化はない見込み

現在の政策運営方針

日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用長期金利がゼロ%程度で推移するよう上限を設けず必要な額の長期国債を買い入れ明らかに応札が見込まれない場合を除き、長期金利について0.25%の利回りでの指し値オペを毎営業日、実施するETFとJ−REITはそれぞれ年間約12兆円、約1800億円に相当する残高増加ペースを上限に必要に応じ買い入れCPや社債などは感染症拡大前と同程度のペースで買い入れを行い、買い入れ残高を感染症拡大前の水準(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へと徐々に戻していく

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