(ブルームバーグ):

米10年物インフレ連動債(TIPS)の利回りが過去60営業日に158ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。かつてない急ペースだ。米連邦準備制度がますますタカ派寄りに傾斜していることが背景。

  インフレ調整後の実質利回りである同利回りの上昇幅は、1990年代後半のTIPS発行開始以降で最大。2008年の世界金融危機時や、当局が資産購入漸減の準備を示唆して米国債利回りが急上昇した13年の「テーパータントラム」時をも上回る。

  米実質利回りは7カ月前には過去最低のマイナス1.25%だったが、プラス0.83%に急上昇。3月の米金融当局の引き締め開始を受けて上げてきたが、先週末に高インフレを示す指標が発表されると追加利上げ幅を巡る観測が高まり利回り上昇も加速した。

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  実質利回り上昇は10年物米国債の名目利回りも11年来の高さに押し上げた。投資家は名目利回りが向こう10年間に19年以来の幅でインフレ率を上回ると予想している。

  このためリスク資産は打撃を受けている。過去2年間はマイナスの実質利回りを背景に投資資金が暗号資産やテクノロジー株に流れ、これら資産の価値が急騰していた。

  しかし実質利回りが上昇している現在は、目先の収益が見込まれない資産は保有による機会費用上昇を踏まえて値下がりする。利回り上昇は将来の企業収益の現在価値も低下させるため、株価にも響く。

  さらに、米実質金利上昇は新興市場への資金流入も細らせる。TDセキュリティーズの新興市場ストラテジスト、ミタル・コテチャ氏はリポートで「米利回り上昇に伴い、ほぼ全ての新興市場通貨は米ドルに対して下落する」とした上で、「今後の展開の多くは米連邦準備制度が今週配信するメッセージ次第だが、現時点で米国の名目および実質利回りがピークだと判断するのは難しい」と分析した。

 

Real-Yield Rout Bigger Than 2008 Inflicts Pain Across the World(抜粋)

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