(ブルームバーグ): 香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は14日、新型コロナウイルスの感染拡大で多くの高齢者が犠牲となったことについて、ワクチン接種をもっと強力に進めていればそうした事態は防げたと認めたが、今月末の退任前に香港の人々に謝罪することは拒んだ。

  林鄭氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「振り返ってみると、最初からもっと積極的な対策を講じ、高齢者、特に介護施設の入居者を守っていれば、死者数は恐らくもっと少なかったのではないかという思いはある」と述べた。香港政府のコロナ対策が不十分だったとトップ自身が認めるのは異例だ。

  在職中の出来事に香港の人々に謝罪を申し出るかどうかとの問いに対しては、 「ノー」と答えた上で、「香港の人々に奉仕し、中華人民共和国の一部として香港を建設するという私の使命を支えるため犠牲を払った夫と息子たちに謝りたいと思う」と語った。

  香港では今年、オミクロン変異株が流行。ワクチン接種を終えていない高齢者に広がり、9000人余りが亡くなった。今年1月時点で1回目のワクチン接種を受けた80歳以上の比率はわずか23%で、香港のコロナ死亡率はしばらくの間、世界最悪だった。

  林鄭氏は再選を目指さないと4月に表明。2019年の大規模な街頭デモにつながった「逃亡犯条例」改正案の撤回を余儀なくされるなど、5年間の任期中に同氏への支持率は急落した。

  中国による香港統制が強まる中で、20年には中国主導で香港国家安全維持法(国安法)が導入された。同法の下で政府に反対する多くの政治家の逮捕や、民主派系の報道機関の閉鎖、香港最大級の労働組合の一部解散が進められ、導入に携わった林鄭氏は米政府の制裁対象となっている。林鄭氏はこれについて、「米国に行きたいとは思わないし、米国に資産はない。いつの日か米当局が間違ったことをし、自らの過ちを正すべきだと認識することを望んでいる」と話した。

  ウクライナに侵攻したロシアに対し米国が米ドル体制を利用した制裁を科したことに香港の高官からはさまざま意見が示された。こうしたことは香港ドルと米ドルのペッグ(連動)制再考を反映しているのかとの問いについて、林鄭氏はペッグ制を変える「根拠はない」と述べた。

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