(ブルームバーグ): 日本銀行の黒田東彦総裁は今週、さらなる円安進行を招くことなく金融緩和を維持する方法を模索する中で、市場とのコミュニケーション能力が試される局面を迎える。総裁任期中で最も困難な仕事になるかもしれない。

  ブルームバーグのエコノミスト調査によれば、日銀は主要な政策手段を維持する見通しだが、黒田総裁は円安を加速させ、イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)の運営に負荷をかけ、物価上昇に対する国民の不満を増長させるリスクを抱えている。

  さらに極めて大きな問題は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ幅が従来のエコノミスト予想の0.5ポイントよりも大きくなる可能性があることだ。FRBの決定は16日から始まる日銀の金融政策決定会合の数時間前に発表されるが、その影響は日銀が議論を行っている間も市場を揺るがしているかもしれない。

日銀会合注目点:現行緩和維持の見通し、円安で市場に政策修正の思惑

 

  黒田総裁は、新型コロナウイルス禍からの経済回復を確実なものにするため金融緩和を粘り強く続けるとの発言を繰り返している。こうした中、日銀ウオッチャーは円安と金利上昇に対応するために政策が微調整されるかどうかに注目する。

  一方、アナリストや投資家は過去に黒田総裁が繰り出したようなサプライズにも警戒する。ブルーベイ・アッセット・マネジメントは日銀がいずれYCC政策を放棄せざるを得なくなるとみるヘッジファンドの一つで、マーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は「維持不可能」と語った。

  大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、「黒田総裁には苦しい局面だ」と指摘。「今回は緩和政策を維持しつつ、さらに状況を悪化させないよう努めるだろう」と述べた。

  15日の外国為替市場では円が対ドルで一時1ドル=135円59銭と1998年以来の安値を更新した。10日発表の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回る伸び率となったことを受けて日米の金融政策の乖離(かいり)がさらに拡大するとの観測が高まり、円安の動きが強まっている。

  ブルームバーグがエコノミスト45人を対象に3−8日に実施した調査によると、日銀が政策やコミュニケーションの調整に動く円安水準は1ドル=140円との見方が多い。4月時点の調査では130円だった。

調査リポート:日銀6月会合でほぼ全員が現状維持を予測

  政府と日銀は国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)を10日に開催し、終了後に初めて共同声明を発表した。日銀ウオッチャーの中には、政府が金融政策に影響を及ぼしてきた過去を踏まえると、日銀が政策金利のフォワードガイダンス(指針)から緩和バイアスの文言を削除する可能性が高まっているとの見方がある一方、そうした動きは単に円の弱気派を勢いづかせるだけだと見る向きもある。

  SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは14日付リポートで、「フォワードガイダンスの修正などに手を付けると、市場のスペキュレーションを逆に過熱させるリスクもあり、日銀の国債購入の必要額を増加させる結果ともなりかねない」と分析。「総合的には非常に微妙な判断となる」と指摘した。

  13日の債券市場で長期金利の指標となる新発10年債利回りが一時0.255%を付け、日銀がYCC政策で許容する変動幅の上限を上回った。長期金利が同水準を上回るのは、日銀が昨年3月に変動許容幅を明確化して以降初めて。日銀が連日実施している10年国債を0.25%で無制限に買い入れる指し値オペでは、14日の落札額が2兆2126億円と過去最高となり、15日も1兆円を超えた。

  みずほリサーチ&テクノロジーズの宮嵜浩シニアエコノミストは、「強力に金利を抑えることによって円安圧力が高まるため、日銀にとっては非常に居心地の悪い状況になっている」と指摘。「日銀自身が問題の原因とみられている部分がある」と語った。

Weak Yen, Hawkish Fed Make This One of Kuroda’s Toughest Calls(抜粋)

(9段落目以降を追加して更新しました)

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