(ブルームバーグ): パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は15日、金融当局として物価高騰の抑制を図る結果、リセッション(景気後退)を招く可能性を実質的に認めた。インフレファイターとしてボルカー元議長が果たした役割を引き継ぐ方向に踏み出した形だ。

  高インフレの沈静化が不可欠だと宣言したパウエル議長は、1994年以来となる0.75ポイントの大幅利上げを主導するとともに、7月26、27両日の次回連邦公開市場委員会(FOMC)会合でも同幅利上げに踏み切る可能性があることを明確にした。

  議長は労働市場の過熱を抑えて失業率を押し上げることを念頭に、景気抑制的な水準にまで政策金利を引き上げることに今回初めて公に支持を示した。過去の事例では、こうした戦略はしばしば景気下降につながってきた。

  15日のFOMC会合後の記者会見の冒頭、議長は「最も重要なメッセージから始めたい」と切り出し、「われわれはインフレ抑制に強くコミットしており、そのために迅速に行動している」と強調した。

  グラント・ソーントンのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「今のFRBはボルカー氏の時代のようになってきた」と指摘した上で、「それは1970年代の失敗を繰り返すことがないよう、当局として失業率の悪化とリセッションを受け入れる用意があることを意味する。供給面のショックが自動修正されることはないため、供給制約を抱える世界に合わせるため当局が需要を抑制しなければならないというわけだ」と説明した。

  当局の金融政策運営姿勢の変化は経済だけでなく、金融市場やバイデン大統領にとってもリスクをはらむ。物価圧力の高まりは従来の予想よりも根強く広範囲に及んでいることが分かり、当局がその退治のために信用引き締めを進めたことで株価はこの数カ月にわたり下落基調が持続。15日の市場は大幅利上げを冷静に受け止めたが、地合いは引き続き脆弱(ぜいじゃく)だ。

  バイデン大統領はインフレ高進の中で支持率が低下。米国がリセッションに陥ったり、それに伴って失業率が上昇したりすれば、政権が掲げることができる経済面の成果もそれだけ減ることになりかねない。

  パウエル議長は22、23両日に上院銀行委員会と下院金融委員会でそれぞれ金融政策に関する半期に一度の証言を行う予定で、議員からは金融当局がインフレの深刻さについて判断を誤った理由や、インフレ退治にコストがかかると考えるようになった理由について厳しい質問を受ける見込み。

  ボルカー氏は1980年代に二桁インフレを沈静化させた功績が連邦準備制度内でもてはやされている。しかし、必ずしも語られることがないのは、同氏がそのために経済の深刻な落ち込みを招かざるを得なかった事実だ。失業率は一時10%を上回ったほか、信用逼迫(ひっぱく)の打撃を特に強く受けた住宅建築業者などからは政策への強い反発があった。

  パウエル議長は「労働市場が力強さを保った状態で、インフレ率を2%に落ち着かせることがわれわれの目標だ」とする一方、「それが可能かどうか決める上で、当局にはコントロールできない多くの要素が非常に重要な役割を果たすことが明白になってきた」と話し、特にロシアによるウクライナ侵攻と、それに伴うエネルギー・食料品価格への影響などを挙げた。

  リセッションの可能性を事実上認めつつも、そうなったとしても必ずしも当局の落ち度ではないと主張したものと受け止められる。

Powell Sets Path to Restrain Economy and Stop Runaway Inflation(抜粋)

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