(ブルームバーグ): 米経済をソフトランディング(軟着陸)に導くことが連邦準備制度によって可能だとまだ期待しているなら、諦めた方がいい。今後1年から1年半以内のリセッション(景気後退)入りは避けられない。

  インフレ抑制に向けかなり大幅な利上げに動く状況にもかかわらず、連邦準備制度当局者らの最新予測では、米経済が適度なペースで成長を持続し、失業率もわずかな上昇にとどまるという穏当なシナリオが示された。だが、はるかに厳しいハードランディングを想定すべき幾つかの理由があると私はみている。

  最初の理由として、執拗(しつよう)な物価上昇を受け、連邦準備制度は経済活動の下支えからインフレ率を物価目標の2%に再び押し下げる努力に軸足を移さざるを得なくなり、雇用のマンデート(責務)がインフレのマンデートに今や従属する立場になった点が挙げられる。労働市場の「力強さが続く」という表現がなくなった6月の連邦公開市場委員会(FOMC)声明と、先週の会見でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の態度の両方からこれが見て取れる。

  次に新たな物価安定への集中は、容赦ないものになると予想される。連邦準備制度当局者らは、インフレを再び沈静化させることに失敗すれば、悲惨な結果が待つと承知している。インフレ期待は制御不能となり、後にさらに厳しいリセッション入りを余儀なくされる公算が大きい。リスク管理の観点からすれば、雇用および成長面でどんな犠牲を払っても、今行動した方がよい。パウエル議長は1960年代後半と70年代の過ちを繰り返したくないはずだ。

  さらに今の景気拡大には、急停止が起きやすい脆弱(ぜいじゃく)性がある。短期的には給与の伸びと経済活動の再開、(2020年と21年の巨額の財政出動に支えられた)健全なバランスシートが需要を後押ししよう。幾つかのセクターで需要が供給を上回っており、需要を抑制し、生産とサービスの減速をそれが十分もたらすには、かなりの金融政策引き締めと時間が必要になるだろう。

  しかし、その時が来れば、金融情勢の逼迫(ひっぱく)や抑制的な財政政策、家計貯蓄の目減りの影響で、生産調整は突然起きる可能性が高い。

  最後に連邦準備制度がリセッションを引き起こすことなく、失業率の0.5ポイント以上押し上げに十分な引き締めを遂行したことはかつてない。サームルールによると、このトリガーに到達すれば、少なくとも2ポイントの失業率上昇を伴うより深刻な景気下降が次に待つ。

  (ロードランナーを追いかける)ワイリー・コヨーテが崖に向かって突き進むように米経済には十分な勢いがあるが、その支えは急速に失われつつある。地面まで転落するのは、心地よい体験ではないだろう。

(ニューヨーク連銀の前総裁、ウィリアム・ダドリー氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

The US Economy Is Heading for a Hard Landing: Bill Dudley(抜粋)

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