(ブルームバーグ):

ニューヨークや香港のトレーディングフロアのムードが紛れもなく楽観的に転じた。アリババグループやテンセント・ホールディングス(騰訊)など中国ハイテク企業の株価は数年ぶりの安値から上昇。市場には中国テクノロジーセクターに対する強気な見方が広がっている。

  ただ、同セクターに深く関わる経営幹部や起業家、ベンチャーキャピタル投資家の話を聞くと状況は少し違う。業界関係者十人余りのへのインタビューで感じ取れたのは、中国共産党のハイテク大手に対する締め付けが和らいでいる兆しはあるものの、バラ色の未来が待っているというわけではないことだ。

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  こうした内情に通じた人々は、中国が過去20年経験してきた「高度成長」は二度とないだろう不安な思いを抱き、当局が再び締め付けを強化するといった疑念や無気力感に襲われている。

  北京を拠点とする1人の起業家は最近、テクノロジー関連スッタートアップの持ち分を売却した。政府が何を容認するのかもっとはっきりするまで新たな事業に取り組むのは気が進まないためだ。「中国のテクノロジー締め付けは実際に起きた。覆水盆に返らずだ」と起業家の男性は報復を恐れ匿名を条件に取材に応じた。

  「景気の低迷を考慮し、今は国内ハイテク各社への規制圧力にブレーキをかけているのかもしれないが、規制当局がプラットフォーム企業に対する監督を再び緩めることは考えられない」と語った。

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  中国の1兆ドル(約135兆円)規模に上るインターネット業界は、ようやく残忍な仕打ちから逃れつつある。アリババ傘下のフィンテック企業アント・グループは2020年、上場計画が突然中止となったが、再び新規株式公開(IPO)を検討していると関係者は指摘。アプリストア向けに新しいビデオゲームの認可も再開された。配車サービスの滴滴グローバルに対する厳しいセキュリティー審査は、わずかな罰金で近く終わることになるかもしれない。

  中国オンライン小売り2位JDドットコム(京東)子会社JDリテール(京東零售)の辛利軍CEO(最高経営責任者)はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、中国政府は「徐々に幾つかの政策シグナルを発し始めた」としながらも、「手綱を握らず馬に乗れた」ような規制の緩い時代に戻る可能性はほとんどないと話した。

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  スタートアップ企業のトップは楽観的になり過ぎないよう投資家に警告している。中国当局が求めた20年11月のアントIPO中止は世界の資本市場に衝撃を与え、中国の変化が疑いようのない事実であることを印象付けた。業界のリーダーらは政府の権力集中に神経質になり始め、アリババ創業者でアントを育ててきた馬雲(ジャック・マー)氏は公の場に姿を見せなくなった。

  中国政府には重要な出来事に先立ち締め付けを強めるという長い伝統がある。共産党は5年に1度の党大会開催を年内に控えており、習近平総書記(国家主席)はこれまでの慣例を破り、異例の3期目就任を目指すとされている。

  こうした中で浮上しているのが、新型コロナウイルスの徹底的な封じ込めを狙う「ゼロコロナ」戦略のロックダウン(都市封鎖)や世界的なインフレ加速で打撃を受けた国内経済を救うため、政府が一時的に規制を緩めているだけだとの懸念だ。

 

 

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