(ブルームバーグ): 米株式市場で痛みが積み重なっているにもかかわらず、想定を下回る水準にとどまっているものが一つある。それは「恐怖」だ。

  金利上昇で米国経済がリセッション(景気後退)に陥るとの懸念がほぼウォール街一帯を動揺させ、ジャンク債から外為に至るまであらゆる市場に大きな変動を引き起こしている。しかし、「恐怖指数」と呼ばれるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)は、過去の弱気相場時の水準を大きく下回っている。

  これについて、オプションストラテジストや銀行関係者は単純な理由を挙げている。米連邦準備制度が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)中に実施した刺激策を縮小する中、S&P500種株価指数は今年初めに過去最高値を付けた後、長期的な秩序ある下落基調を示している。これは2020年3月のコロナ禍や08年9月のリーマン・ブラザーズ・ホールディングス破綻のショックに伴う急落とは異なるという。当時はいずれもVIXが急上昇していた。

  フェデレーテッド・ハーミーズのシニアポートフォリオマネジャー、ルイス・グラント氏はリポートで「強気相場の過剰が解消されると、ネガティブなセンチメントが会話を支配するものだ。しかし、VIXはわずかに上昇しているに過ぎない。少なくとも株式について現在は完全なパニックではなく、秩序ある弱気相場だ」 と指摘した。

  実際にVIXは今年に入り、節目水準の40を超えていない。コロナ禍初期と08年信用危機時には、その2倍の水準に跳ね上がっていた。

  現在の相場は、インターネットバブル崩壊後の相場により類似している。プリズムFPのシニアセールス・クオンツストラテジスト、タラル・デビ氏は現在の動きについて「大きな突然のショックはないが、実現ボラティリティーが高い水準にとどまっていた2000ー02年の弱気相場に似ている」と指摘した。

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