(ブルームバーグ): 来日したイエレン米財務長官は12日、東京都内で鈴木俊一財務相と会談した後、米国が円買い支えの介入を支持する考えはないことを示唆した。

  イエレン氏は記者団に、「一般的に、日本や米国、主要7カ国(G7)などの通貨の為替相場は市場が決定すべきだというのがわれわれの考えだ」と述べ、「まれで例外的な状況においてのみ介入は正当化される。介入については協議しなかった」と語った。

  円がドルに対し1998年以来の安値水準に下落したことで、日本政府が介入するのではないかとの観測が浮上していた。

  イエレン長官と鈴木財務相はこの日の会談で、為替相場の大幅変動はリスクをもたらすとの点で一致し、適切に協議・協力することを約束した。

  両財務相は会談後に発表した共同声明で、「ロシアの侵略による経済的な影響が為替相場の変動を高めており、これは、経済および金融の安定に対して悪影響を与え得る」と指摘。「われわれは、G7(主要7カ国)およびG20(20カ国・地域)のコミットメントに沿って、引き続き、為替市場に関して緊密に協議し、為替の問題について適切に協力する」と表明した。 

  イエレン、鈴木両氏はまた、先月開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)の共同声明でロシア産石油輸出に価格上限を設定することを検討するとした合意内容に歓迎を表明。イエレン長官は、ロシアのウクライナ侵攻の資金源を抑制しながら、世界の市場への原油供給を維持するための方法としてこのアイデアを推進してきた。

  鈴木氏は会談終了後、為替については「私の方から日本の今の状況、立場を説明し、理解いただいた」と記者団に語った。

  このコメントについて尋ねられたイエレン氏は、鈴木氏は「円相場の動きについてわれわれに概説した。大きく下落したことは明らかだが、政策についての協議はしなかった。私はG7とG20が為替相場は市場が決定することにコミットしているというわれわれの基本的な見解をあらためて伝えた」と説明した。

  財務省幹部は、ロシアのウクライナ侵攻が引き金となり、エネルギーや食糧を起点としたインフレが加速した結果、金融政策運営の難しさが増したと指摘。為替市場を動かす一因となっており、多くの国に多大な悪影響を与えていると語った。

  11日には、円が対ドルでアジア通貨危機当時の1998年9月以来の安値を更新していた。日本政府はエネルギー輸入価格の高騰や日本の家計の購買力低下をもたらしている円安に懸念を示してきた。

急速な円安進行を憂慮、必要な場合は適切に対応−鈴木財務相

   円安進行を受けて、日本政府・日本銀行が円相場押し上げのため、恐らく米当局と外為市場で協調介入を行うのではないかとの観測が浮上。ただ、日米による円買い支えの協調介入は1998年が最後だ。いずれにしても日米の金融政策の方向性の大きな相違を踏まえれば、そうした介入があったとしても、持続的な効果はほとんどないと市場参加者は指摘している。

  米財務省高官は都内で記者団に対し、G20の以前の合意ではメンバー諸国が市場ベースの為替レートを尊重することにコミットしていた一方、経済や金融の安定にマイナスの影響を及ぼしかねない「過度の変動や無秩序な動き」に対処する余地を認めている点に言及した。

  だが高官は、この日の共同声明では日本が現時点で過度の変動や無秩序な動きに直面しているとは言っていないと強調。さらに、日本の当局による外為市場介入が正当化されるとイエレン長官が認めるものでもないとし、単に日米両国が今後も為替レートを監視して協議するという趣旨だと説明した。

  イエレン氏は今回の訪日後、インドネシアのバリ島で15日から2日間の日程で開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議に出席し、韓国も訪問する予定で、ロシア産石油の価格上限の問題をアジア歴訪の中心に据えている。

  12日の声明では、「最も脆弱(ぜいじゃく)かつ影響を受ける国々が、エネルギー市場へのアクセスを維持することを確実にする緩和メカニズムを検討しつつ、必要に応じて価格上限を設定することの実現可能性を含め、エネルギー価格上昇の抑制策の模索を続けるG7の取り組みを歓迎する」としている。

  イエレン氏はまた、中国政府が他の債権国と共に債務負担について発展途上国を支援することに後ろ向きだと批判。「中国は債務再編への参加について協力的でない。われわれはこれについて非常に不満に感じている」と語った。

  イエレン長官は鈴木財務相との会談に先立ち、日銀の黒田東彦総裁と会談した。

 

(1−3、8、16段落にイエレン氏の発言などを追加して更新します)

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