(ブルームバーグ): 欧州で今年半ばまでに最もパフォーマンスが良かったESG(環境・社会・企業統治)ファンドの運用会社は、脱炭素から程遠い資産に実は大きく依存していた。表面的にも、よりグリーンな未来に向けて資本誘導を図ろうとする当局の規制にのっとっていた。

  ESG株式ファンドで年初から6月半ばまでのパフォーマンスがトップとなったのは、ユーリゾン・アセット・マネジメントが運用するファンドで成績はプラス約16%。その他の欧州のファンドは平均でマイナス20%だった。

  ユーリゾンの輝かしいパフォーマンスについて、同ファンドを運用するフランチェスコ・セダティ氏は、ポートフォリオに含まれる化石燃料やその他のコモディティーが「ESGの観点で見るとやや議論を呼ぶ銘柄」であることを直ちに認めた。

  ただ一方で、欧州連合(EU)のサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)の、いわゆる「8条」に分類される商品は、サステナビリティーを「促進する」投資と定めており、同氏のファンドはこの規則に完全に準拠したものだと主張する。SFDRは、EUで2021年3月から適用が始まったESG関連投資の方針やプロセス開示を義務付ける規則だ。

  これは、欧州の画期的とされる反グリーンウォッシュ・ルールがあまりに曖昧で、場合によっては実効性のないものであるとして、投資家や活動家、弁護士、さらには規制当局からも批判にさらされつつある状況を示す好例だ。ユーリゾンのファンドはルクセンブルク当局が監督下に置くが、国境を挟んだフランスの金融当局は、ESGファンドに化石燃料関連の銘柄を含めることを疑問視している。

  フランス金融市場庁(AMF)のオフェル長官は、8条ファンドの運用者らが化石燃料銘柄を選定するには「相当な」正当性が必要だと指摘する。しかし、SFDRのより厳しいカテゴリーである「9条」ともなれば、そうした銘柄を保有するのは「論外だ」という。

  欧州持続可能投資フォーラム(Eurosif)は6月、こうしたSFDRのもろさが改善されなければ、ESGファンド運用業界が「重大なレピュテーションリスク」に直面すると警鐘を鳴らした。そのリポートによると、21年末時点で化石燃料関連企業へのエクスポージャーが5%を超えるものが、8条ファンドで39%、9条ファンドで33%あったとの試算が示された。

  さらに、発電用燃料などに用いられる「一般炭」からの収入が全体の5%を超える企業へのエクスポージャーがあったのは、8条ファンドで36%、9条ファンドでは22%だった。Eurosifは「驚くべき」結果だと指摘する。

  ロンドンに本拠がある法律事務所シモンズ・アンド・シモンズのパートナー兼ESG担当責任者であるソナリ・シリワルデナ氏は、今後1年で規制を取り巻く環境に大きな変革が起きる可能性があるとして、顧客に注意を促している。「これからの1年間はジェットコースターに乗っているかのような状況になるだろう」と言う。

  つまり、世界で最も野心的なESG投資の規制を確実に目的にかなったものにしていくには、残された時間が少ないということだ。

  国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は4月、このままでは地球の気温がセ氏3度余り上昇するとの報告書を公表した。地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」は産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えることを目標に掲げているため、この上昇幅はその約2倍となる。

  そうした事態を防ぐための資金の流れをつくることができるのか。問われているのは、資産運用業界と規制当局を頼りにすることができるのかという点だ。

SFDR、第8条と第9条の分類

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