(ブルームバーグ): 安倍晋三元首相の「悲願」だった憲法改正について、岸田文雄首相は論議を加速させる考えを示している。早期の国会発議を目指すとしたが、内容では「改憲勢力」とされる政党間でも主張に隔たりがあり、実現への道は険しい。

  岸田首相は11日に行った会見で、安倍元首相の「思いを受け継ぐ」として特に情熱を傾けてきた憲法改正に取り組むと述べた。各党と合意形成を進め、具体的項目について「3分の2の賛成を結集しなければいけない」とも語った。

  参院選では、憲法改正論議に前向きな自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党で93議席を獲得し、非改選と合わせて改憲発議に必要な3分の2以上の議席を占めた。2016年の参院選後も「改憲勢力」が衆参両院で発議に必要な議席を確保し、当時首相だった安倍氏は特に自衛隊の明記に意欲を見せたが、国会での議論は進まなかった。

  憲法改正は、衆院で100人以上、参院なら50人以上の賛成を得て改正原案を提出。両院の本会議で3分の2以上の賛成を経た後に国会として発議し、国民投票で過半数の賛成を得られれば実現する。

  安倍氏の死去が改憲論議に与える影響について、元自民党職員で政治評論家の田村重信氏は、「安倍氏が一番やりたかったのは憲法改正だ」述べ、「それを体現していくことが岸田氏に課せられた課題」と指摘した。

  一方、多摩大学ルール形成戦略研究所のブラッド・グロッサーマン副所長は、憲法改正の可能性を悲観的にみている。「安倍元首相の取り組みで進んでいたが、その推進力がなくなった今、実現に向けた原動力を失ってしまった」と述べた。

  読売新聞が11〜12日に行った世論調査によると、憲法改正に向けた議論が国会で活発に行われることを「期待する」人は58%と半数を超えた。「期待しない」人は37%だった。ただ、優先して取り組んでほしい課題(複数回答)とした人は37%で、選択肢の10項目の中で最も低かった。「景気や雇用」が91%とトップで、「物価高対策」80%が続いた。

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