(ブルームバーグ): ここ数十年で最も激しいインフレを過小評価してきた各国・地域の中央銀行は今、物価高を抑えようとリセッション(景気後退)をも辞さない勢いで金融引き締めを進めている。

  一部の中銀当局者が今になって新型コロナウイルス禍からの回復期を通じ過度な刺激策を講じてきたと認めているように、積極的な利上げを行っている中銀がブレーキを踏み込み過ぎるのではとの懸念も強まっている。

  今のところ多くの先進国と新興国の中銀にとって、利上げを続ける以外の選択肢はほとんどない。インフレ率がまだピークに達していないためだ。

  ブルームバーグ・エコノミクスは世界のインフレ率が4−6月(第2四半期)の年率9%から7−9月(第3四半期)には9.3%に加速すると予想。今年末までには8.5%に鈍化するとみているものの、それでも依然として高水準だ。

  中銀は経済のソフトランディング(軟着陸)を一段と難しくするペースで引き締めを進めている。シティグループのエコノミストは世界的なリセッション確率を50%と想定。経済環境が予想より急激に悪化しているとみるバンク・オブ・アメリカ(BofA)のエコノミストは米国が「年内に緩やかなリセッション」に入ると予測している。

信頼感崩壊

  政策当局がリセッションを回避できるという投資家の信頼感はすでに失われている。BofAの月次ファンドマネジャー調査によると、グローバルな成長・利益期待は過去最低の水準。リセッション見通しは新型コロナのパンデミック(世界的大流行)で景気が減速した2020年5月以来の高水準だ。

投資家は完全降伏、リスク回避は金融危機時以上−BofA調査

 

  TSロンバードのグローバルマクロストラテジスト、ダリオ・パーキンス氏は、労働市場は引き続き堅調である一方、中銀には慎重な政策運営が求められるとコメント。「過度の引き締めに急速に進む途上にわれわれはいる。心配なのはインフレでまごついた政策当局が今、償いをしたいと考えていることだ。これが行き過ぎ世界経済に不必要なダメージを与えるリスクがある」と述べた。

  元日本銀行審議委員の白井さゆり慶応義塾大学教授は、金融政策への信頼を補強する上で、インフレ抑制が極めて重要だと指摘。賃上げ要求が続いたり物価上昇予想が定着したりしてしまえば信頼がさらに損なわれるため、現行の利上げが経済成長を鈍化させる見通しであっても、中銀はインフレ対応を優先せざるを得ないと説明した。

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