1977年に世界で初めてスターウォーズが公開された映画館は「MANGA」の殿堂になっていた。サンフランシスコの由緒あるレンガ造りの建物に入るのはVIZ Media(ビズメディア)社。小学館と集英社が出資し、1986年から北米を中心に日本の漫画やアニメの翻訳出版などを手がけている。日本発の大ヒットはいまだ「ポケットモンスター」だけという世界市場。「オタク」向けだった米国のマンガ読者にどう魅力を伝えるのか。厳しく規制される暴力や性的シーンへの対応…マンガをMANGAにするには苦労もあった。

■マンガ好きには天国のような職場

【シリコンバレー体験記】MANGAを世界へ 元映画館だけあって1階は広いワンフロアになっている。社内はドラゴンボール、NARUTO、犬夜叉など日本でもおなじみのキャラクターにあふれ、社員が働く個人スペースにも大量のマンガ、キャラクター人形、ポスター、家族の写真などが所狭しと並んでいる。マンガ・アニメ好きには天国のような労働環境だ。会社のパソコンの上に小さな人形を並べて満足している自分が小さな人間に思えてきた。

【シリコンバレー体験記】マンガ好きには天国のような職場 卓球やボーリング大会、野球観戦など社内イベントも盛りだくさん。ハロウィーンの日には社員がコスプレして仕事をしている。カリフォルニア州は伝統的に従業員保護の考えが強い。日本の出版社では多い深夜残業もまったくない。「仕事さえきちんとしてくれれば自由に働ける雰囲気がある。また労働環境が良くなければ世界中から優秀な人材を引き止められない」と同社で企業戦略・新規事業の担当をしている漢城まどかさん。

 日本企業の子会社だが社員はマンガに子供の頃から親しんできた韓国・中国人など多国籍だ。182人の従業員の6割は女性。サンフランシスコ周辺は1人で渡米している日本人女性は意外と多いそう。漢城さんも3児の母で、育児も家事も夫と分担。夕食は必ず家族全員そろっている。「アメリカはワークライフバランスの意識が徹底しています。日本では3人産めなかったかもしれません」。

■「NARUTO」が一番人気、「NANA」は成人向け

【シリコンバレー体験記】MANGAを世界へ 主事業の単行本は北米で年間約400冊を販売。日本で250万部以上出ている少年ジャンプも英語版は30万部。米国のマンガ読者はもともと「オタク」向けだったため年齢層は高く、ティーンエイジャーへの浸透が課題になっている。現在のダントツ人気は「NARUTO」だ。アメリカではバトルものなど単純明快なストーリーが好まれるという。

【シリコンバレー体験記】MANGAを世界へ 日本のコンテンツであるマンガを世界の「MANGA」にするには様々な苦労がある。米国では子供向けコンテンツで暴力や性的シーンなどの規制が強い。「ONE PIECE」のアニメを子供向けの時間帯に放映するため、登場人物のタバコをペロペロキャンディーに、拳銃をペコペコハンマーに差し替えたそうだ。ちなみに「NANA」は成人向けの扱いを受けている。他にも企業ロゴや宗教的なものなど気を使わなければならない。またアメリカでは一般的に本は左開きで、右開きのマンガを逆版にしたら登場人物が左利きになってしまったという笑えないエピソードも。

 日本の出版市場はこの10年、下降傾向が止まらない。ゲームの影響などでマンガを読まない子供も増えている。「日本語と再販制度に守られた日本とは違う世界市場の厳しさがある。ここからMANGAを世界に広げたい」と漢城さん。そのためにバイリンガルなスタッフを常に探している。ただし「柔軟性がないとダメ。挑戦をプラスに変えられる思考が必要です」とつけ加えるのを忘れなかった。

(gooニュース編集部:住友馨、取材協力:パソナテック

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