PRの現場でソーシャルリリース(パブリックリリースと呼ぶ場合もある)が注目されています。これまで「リリース」と言えばプレスリリースでしたので、呼び名だけでなく、定義そのものを変えてしまう大きな変化が起きようとしています。インターネットの普及で、PR活動において、生活者へのダイレクトな情報発信が重要な意味を持つようになってきているのです。

■プレスだけに限らない
「プレス」は報道機関のことで、新聞やテレビ、雑誌などのことです。一方、「パブリック」「ソーシャル」は、公共、社会という意味です。なぜ言葉が変わったのでしょう。それは、これまで報道機関だけに向けられていた情報発信が、広く公共や社会にまで向けられるようになったからです。

この変化の背景にはインターネットの普及があります。ほどんとの企業や官公庁がホームページを持ち、会社や組織の概要だけでなく、投資家向けの情報(IR=インベスター・リレーションズ)、新製品やリリースも掲載するようになっています。

■軽視できない消費者による情報発信
さらに大きな理由として、ブログやSNSの登場によって生活者自身が直接情報発信を行うことができるようになったことが挙げられます。総務省総務省情報通信政策研究所(IICP)によると、2008年1月時点での国内のブログの総数は1690万に上ります。

この数は、もはや企業にとって軽視できるものではありません。生活者から直接発信される情報量が著しく増大したことにより、企業は生活者に対して、報道機関と同じような対応する必要に迫られているのです。
生活者に向けたダイレクトな情報発信は、これまでも行われていましたが、あくまで生活者を「エンドユーザー」と見なしてのものでした。生活者を「メディア」と見なして報道機関と同じように対応する、ということはPR史上始まって以来のことでしょう。

■先行するアメリカの取り組み
生活者へのダイレクトな情報発信を、という傾向はオンラインリリース配信サービスで特に目立っています。以前は報道機関向けのサービスでしたが、現在では読者を報道機関だけに限定しなくなっています。PR先進国の米国を見ると、ブログを利用したり、動画・ポッドキャストで情報提供したり、さまざまな取り組みが行われています。

例えば、新進気鋭のオンラインリリース配信サービス「PRWeb」が配信しているプレスリリースを見ると、ワンクリックでリリースの内容をソーシャルブックマークやSNSで共有できたり、ブログに引用することができるボタンが備え付けられてます。
また、50年以上の歴史を持つPR通信社である「PR Newswire」はリリース配信用のウィジェットやブログパーツも開発しており、一般の生活者がリリースを簡単に受け取ることができるよう、工夫がなされています。

■企業自ら情報発信
リリース配信サービスではなく、自社サイトでのソーシャルリリース発信の例としては、例えばネットワーク機器大手のシスコシステムズが有名です。シスコシステムズのサイト内にあるプレスリリースコーナーをよく見ると、プレスリリースに混じって「Social Media Release」と書かれたものがあることがお分かりになるかと思います。
もともと、シスコシステムズのプレスリリースには、ソーシャルブックマークやソーシャルニュースサイトへの登録ボタンや、ユーザーによる評価ボタンのようなソーシャルリリース的機能が備わっていたのですが、この「Social Media Release」はさらに、YouTubeなどで共有された動画が貼り付けられていたり、関連情報が書かれたブログ記事やポッドキャスト、さらにはSecond Lifeへのリンクが多く貼られ、ソーシャルメディアとのリレーション機能が一歩進められたものになっています。

日本ではまだここまでのものは登場していませんが、ポータルサイトの企業情報ページにリリースを配信するオンラインリリース配信サービスが登場しており、報道機関だけでなく生活者にも、という潮流は確実なものとなりつつあるようです。

■日本ではブロガーに注目
日本でいま注目されているオンラインリリース配信サービスは、ブロガーに向けて情報発信を行うサービスです。言うなればプレスリリースならぬ「ブロガーリリース」です。いくつもの企業がこういったサービスを行い新たな取り組みがなされる一方で、様々な弊害についても指摘され始めています。このことについて、次回詳しくお話したいと思います。

 

PRの現場から
誰もがその名を知っているのに、正確な内容を言える人は少ない不思議な言葉「PR」。書店に行けば専門書が並び、それを専門の会社も存在するけれど、いまいち実体が分からない… このコラムでは、そんな「PR」のリアルな姿を現場から伝えます。

川城 一直(かわしろ・かずなお)
1976年生まれ。PR会社で働く現役PRパーソン。大学卒業後、メーカー企業に就職。営業部門を経て、広報部門で企業PRを担当。その後PR会社に転職した。未婚。趣味はスポーツ観戦。「PRのPR」を目標にしている。


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