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イベントの様子は米国で働く日本人ブロガーの手によってインターネットの動画共有サービスで中継され、会場の観客以外にもリアルタイムで世界中に発信された。イベント終了後はブログなどでその様子が伝播していき、このイベント後に初めてiPhoneアプリのランキング入りした参加者のアプリもあった。

■Googleも勢い見られず


  Googleのブース
マックワールドでもiPhoneアプリを出展していた会社が10数社あった。その多くがビジネス系のアプリを販売している会社であったが、イベントへの高額な出展料を考えるとアプリの販売が多少増えたところでコストを回収するのは厳しかったのではないか。おそらくアプリをきっかけに、より大型のビジネス系案件へ繫がることを期待していたのではないだだろうか。

大企業のブースもグーグルをはじめとして控えめなものが多かった。グーグルは手厚かった従業員への福利厚生をカット、一部スタッフのリストラも報じられている。ひところの勢いは影をひそめてしまったようだ。日本企業もニコン、キヤノン、富士通といった大手といえる数社以外の出展はなかった。

その状況を見るにつれ、日本のサービス開発者として「アップルの聖地」でサービスをPRしていることを嬉しく思いながら、大企業としてマーケティングを行っていくことの難しさを感じずにはいられなかった。我々のように個人規模でも、海外に乗り込んでPRを行うことができる一方で、会社規模として出展をすることを考えると、途端にコストが増大してしまう。

■成功のハードルがあがる

問題はコストだけではない。iPhoneアプリの世界は、大成功すれば数億の売り上げも可能だが、ほとんどのアプリは月数十万円の売り上げに達成すれば大成功、多くが数万円にも満たないというような状況だ。そのような商品を会社という単位で手がけると人件費を回収するのもままならない。大企業で取り組むとなると損益分岐があがってしまい、成功のためのハードルがあがってしまう。個人や数名の規模なら、その売り上げ規模でも十分やっていけるし、もしもヒットすれば多大な恩恵を得ることが可能になる。

iPhoneアプリのような世界では品質が必ずしも売り上げにつながるとは限らない。斬新なアイディアであるか、あるいはサービスをリリースするタイミングも大きく影響してくる。そのためには、試行錯誤が容易な身軽な組織のほうが強みを発揮する。

■時代に合わない大企業

これはiPhoneアプリのようなウェブサービスに限られた話だけではないように思う。米国ではビックスリーが苦戦する中、テスラという電気自動車を開発・販売しているベンチャー企業が注目を集めている。多数の従業員を抱え、大量に商品を売りさばく大規模なマーケティング、販売組織というのが時代に合わなくなってきているのではないか。

マックワールドのアップルのブースでは、iPhoneアプリが紹介されて観客で埋まり、アップルの自社製品を紹介するセッションよりも盛況だったように思う。そこで紹介されているのはアップルが開発したものではなく、世界中の開発者の手によるサービスだ。このこと自体が変化を反映しているように感じられた。

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美谷 広海(みたに・ひろうみ)
1975年フランス生まれ。小学校は富山、中高をギリシャで過ごす。引っ越し歴14回。大学在学中に佐渡島で能を演じる高校生を取材し、飛騨高山ドキュメンタリー映像祭入賞。2006年8月からブログ「世界を巡るFool on the Web」を開始。現在、IT企業の国際展開を担当。世界各地を転々としながら創作活動を続ける村上春樹的ワークスタイルが目標。

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