前回の記事(あなたは「乙女男子」を知っているか?!)で、街に溢れるカワイイものを男性が好きになるのは不自然ではないことを指摘した。しかしながら、誰もが「乙女男子」になるわけではない。その差はどこにあるのだろうか。今回は、時計を20年程巻き戻し、当時の子供たちに絶大な影響力を与えていたコミック誌に注目してみる。仮説はこうだ『週刊少年サンデー』愛読者こそが、後の「乙女男子」なのである!

 ■コミック誌の影響を受けた30代 

現在30歳前後の世代で、少年/少女コミック誌の影響を全く受けていない人は少ないだろう。

『週刊少年ジャンプ』は1989年に500万部を突破。有名な「友情・努力・勝利」のテーゼのもと『聖闘士星矢』『ドラゴンボール』などを大ヒットさせていた。販売部数で2位だった『週刊少年マガジン』は、『名門第三野球部』『スーパードクターK』『湘南純愛組』、などが連載され、硬派路線を歩んでいた、と捉えるべきだろう。

ちなみに、少女コミック誌では、『りぼん』が最大で255万部を発行し、柊あおいの『星の瞳のシルエット』(1985〜1989年連載)が「全国200万乙女のバイブル」と称されていた。


サンデーで連載されていた高橋留美子の「らんま1/2」とりぼんで連載されていた一条ゆかりの「有閑倶楽部」

そんな中、『サンデー』は、『ジャンプ』『マガジン』とは一線を画し、いわゆるラブコメ路線で人気作を送り出していた。高橋留美子の『うる星やつら』『らんま1/2』、あだち充の『タッチ』は、今更多くを説明する必要もないだろう。『ジャンプ』や『マガジン』と比較すると瞳が大きい作品が多かった。

■サンデーに散りばめられた女性コンテンツへのリンク

瞳の大きさよりも重要なのは、競合誌と比較して男女の関係性を主題に置いている作品が多い、ということである。

『タッチ』は高校野球と新体操で全国制覇することが「目的」として描かれることはない。あくまで上杉達也と浅倉南の二人が織り成すストーリーなのである。『らんま1/2』は「ラブ」よりも「コメ」養分が多めながらも、やはり早乙女乱馬と天童あかねの物語である。

なにより、ラブコメは少女マンガの恋愛をそのまま少年誌に持ち込むには刺激が強いため、よりソフトにするために生まれた表現技法だということも忘れてはいけない。

このように、80年代後期から90年にかけて『サンデー』派だった少年達は他の少年誌の読者と比べて、女性的なコンテンツへのリンクが多く散りばめられていた、と考えられる。

■少女コミックの側にも変化が…

逆に、少女コミックの側を見ても、恋愛一辺倒ではない作品が多く登場しはじめた時期と重なっている。一条ゆかりの『有閑倶楽部』(1981年より『りぼん』で連載開始)は、暇を持て余したお金持ち高校生男女6人が数々の事件を解決するというストーリーだし、那州雪絵の『ここはグリーン・ウッド』 (1986〜1991年『花とゆめ』連載)は高校の少年寮を巡る群像劇で男性ファンも多かった。

「ボクナリ」世代は、コミックに関して言えば、「少年もの」「少女もの」といった枠組みに捉われず、それほどストレスもなく面白い作品を読むことが出来た最初の世代だと言えるのかもしれない。

ただ、これはまだ当研究所の仮説に過ぎない。「じゃあ石渡治のボクシング漫画『B・B』(1985〜1991年『サンデー』連載)はどうなんだ」と言われれば返す言葉がない… 仮説を補強するためにも、この記事をきっかけにして、当時のマンガを読み返してみて頂けると幸いである。

 

乙女男子研究所
カワイイもの、オイシイもの、ファンシーなもの大好きな「乙女男子」が増えている!?当研究所では、「男らしさ」に縛られない新しい男子のライフスタイルを社会・文化と絡めつつ探求して参ります。

ふじい りょう(Parsley)
1976年東京都生まれ。埼玉の団地育ち。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物」らしく』にてメディア、カルチャー、ネット情報を題材に運営している乙女男子。好きな食べ物はプリン。ハマっているのは『桜蘭高校ホスト部』。 


 変化の時代を新たなスタイル・価値観で生きる30代男子をつなぐコミュニティメディアです