答志島には16歳以上の男性が共同で暮らす「寝屋子」という独自の風習があります。「答志島ブログ」を書いているミセス答志島さんにお願いして、島に住む30代に集まって頂き、その寝屋子についてお伺いすることが出来ました。旅先での一晩限りの邂逅。同じ30代ということもあり、海産物をあてにビールを飲みながら、寝屋子だけでなく、結婚や子育て話で大いに盛り上がり、会合は深夜まで続きました。(ボクナリ 美谷広海)


おしゃれな外観の「浜与本店」
■島の出会いはどうなっている?

集合場所はミセス答志島さんこと浜崎さんのお店・島の海産物を販売している「浜与本店」の囲炉裏。おしゃれなお店は、村おこしで知られる高知県馬路村で活躍するデザイナーに依頼したとか。

お店からもれる光と笑い声に気付いて、途中でどんどん参加者が増え、奥様方や子供たちも集まって賑やかになりました。男性は皆30代、漁師、船乗り(海運業)、海産物の販売、と仕事はいずれも海に関わっています。漁師生活は朝が早く朝3時起床、夕方6時就寝の生活ということでしたが、遅い時間までお話を聞かさせて頂きました。

「結婚相手は、同じ島の幼なじみという人が多いよね」

まず気になる男女の出会い、結婚相手を訪ねると少し意外な答えが返ってきました。島外で知りあって結婚するケースもあるそうですが、答志島の30代は「なぜか幼なじみや同級生カップルが多い」とのこと。仕事や都会の暮らしを求めて若者が流出して過疎化が進む離島も多いのですが、答志島では少し様子が違うようです。
中には「十数年ぶりに島で夜這いをした」という猛者の方もいるそうで…今は無事にそのお相手と結婚されているとのことでした。

■相次ぐ20代のUターン

30代はクラスの約半分が島に残り、最近は相次いで20代がUターン。一度島を出て伊勢、名古屋などで就職していても「ひとりが戻ってくると、芋づる式に、周りの仲間が次々と帰ってくることが多いなぁ」。

一方、「俺らの世代は島を出ずに働いている人が多いから、ちょっと20代はうらやましい」という本音もちらり。答志島では帰ってきた若者は親の船に乗り、漁業を継いでいきます。

■子供は3人が「普通」

ところで、島内を歩いていると、路地で子供が走り回っており、東京では見られなくなった町中が子供の遊び場になっています。子供は3人以上が「普通」だそう。島という限られた空間なので、知らないところに行ってしまったり、犯罪に巻き込まれたり、といった心配がないようです。さらに、家族だけでなく地域が子育てを支えていて、「全員が顔見知りなので、仕事をしていたら誰かが遊んでくれるから…」。この日も大きな子供が別の家の赤ちゃんの面倒を見ていました。



30代が集まり、寝屋子や子育てについて話が弾んだ
この地域で子供を育てる土壌となっているのが、答志島に残る寝屋子というユニークな風習。昔は鳥羽地方全域にあったこの制度も、今残っているのは答志島だけで、鳥羽市の有形文化財に指定されています。

■寝屋子が支える地域コミュニティ

16歳に達した男性が、同学年の5人から10人でグループを作り、寝屋親と呼ばれる人の家で共同生活をします。寝屋子のメンバーはずっと寝屋親の所にいるわけではなく、夕食を実家で食べてから寝屋親の家に行き交流を深めます。結婚すると寝屋子から離れますが、一緒に過ごした絆は深く、家庭や地域の行事があれば助け合う「生涯の仲間」となるのです。

お話を伺った皆さんも全員が寝屋子を体験しており、悪いことをすると個人や家ではなく、寝屋子単位で怒られ、「寝屋親に対して申し訳なかったなぁ」と昔を思い出していました。

浜崎さんはすでに寝屋親も経験。寝屋親に選ばれると寝屋子用に部屋を用意しなければなりません。経済力はもちろん、「あの人なら子供を預けても大丈夫」という信頼がなければ寝屋親には選ばれないそうです。

答志島は漁師の島。寝屋子は厳しい仕事である漁業の担い手の確保や運命を共にする海での仕事の団結力を保つための仕組みとも言われています。地域のコミュニティを支える寝屋子があるからこそ島が元気なのかもしれません。


僕らの島生活
日本は7000近くの島で形作られ、本州などを除く離島のうち約400島に人が暮らしています。海に囲まれた小宇宙のようなコミュニティに残った独自性 は、画一的な大量消費から多様性が重視される時代の変化の中で魅力を増しています。離島をただ旅をするのではなく、島に生きる同世代の男性を訪ねてさまざ まな島の姿を紹介していきます。

美谷 広海(みたに・ひろうみ)
1975年フランス生まれ。小学校は富山、中高をギリシャで過ごす。引っ越し歴14回。大学在学中に佐渡島で能を演じる高校生を取材し、飛騨高山ドキュメンタリー映像祭入賞。2006年8月からブログ「世界を巡るFool on the Web」を開始。現在、IT企業の国際展開を担当。世界各地を転々としながら創作活動を続ける村上春樹的ワークスタイルが目標。


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