ウミネコ、ウトウ、絶滅が危惧されるオロロン鳥など100万羽の海鳥が飛び交う「野鳥の楽園」天売島。海鳥の繁殖地は国の天然記念物に指定され、国指定鳥獣保護区にもなっています。周囲12キロの島の北側は断崖絶壁の野鳥エリア、南側の集落には、この規模の離島としては珍しく高校があり、6人の生徒が授業を受けています。最盛期には2000名を超えていた人口も今では約350人に。海沿いの集落には空家と壊れた漁船が雨ざらしとなっていました。(ボクナリ 美谷広海)


観音崎展望台のウミネコ
「自転車なら逆周りが楽ですよって言ってたのに」。レンタルサイクル店のおばちゃんのアドバイスに従って、周回道路の左回りを選んだのに、アップダウンはかなり激しく途中で何度も自転車を降りることに…
「スクーターを借りるべきだったかな」、後悔しても時既に遅し。自動販売機すらない島の反対側にまで来てしまった以上前に進む他ありません。

途中、灯台などに寄り道しながら一時間ほどで観音岬展望台に到着。ここは天売島の観光パンフレットには必ず出てくる切り立った崖にウミネコが繁殖している絶景ポイント。残念ながら深く霧がたれ込めています。

ウミネコはラッシュアワーのように飛び交い、展望台の手摺の上にもふてぶてしく居座っています。断崖に目を向けると、絶壁の草むら、岩の間に何百羽ものウミネコが巣をつくっていました。ふとした音で一斉に何十羽もの鳥が飛び立つ様子は、まるでヒッチコックの映画『鳥』のラストシーンのようです。



断崖に立つ野鳥観察舎
さらに島の北岸を西に進み、100メートルを越す断崖絶壁を見渡す海鳥の観察舎にて休憩。小屋の中には、野鳥を観察するための望遠鏡が三脚の上に置かれていますが、鎖などはもちろんなし。離島ならではの光景です。
ありがたく使わせてもらい、島のシンボルにもなっている絶滅危惧種のオロロン鳥を見ることができないか覗いてみましたが、オロロン鳥を呼び寄せるために設置された模型(デコイ)しか目にすることができませんでした。
オロロン鳥の数は毎年減りつづけ、ここ数年は滅多に見られなくなっているそうです。限られた岩場にしか巣を作らないオロロン鳥は生命力が強くありません。100万羽の海鳥が飛来する「鳥の天国」と呼ばれる奇跡の島でも、近年観察されるオロロン鳥は10羽に満たないとか。自然は過酷です。


  天売高校の教室
島を一回りした後、天売高校に立ち寄りました。急な訪問にもかかわらず先生が校舎内を案内してくれました。生徒数は今年3名増えて6名。おそらく日本で最も小さな高校のひとつではないでしょうか。

定時制の高校のため生徒が学校に来るのは夕方から。「生徒は日中は漁など親の手伝いをしていて頭が下がります」と先生も感心していました。

ひっそりとした校舎を回り、木の廊下と昔ながらのストーブが置かれた教室を眺めているとなんだか懐かしい思いにさせられます。体育館には、卒業生が書いた大きな地図と、高校唯一の部であるバトミントン部用のネットが張られていました。


  壊れたままの漁船
高校を後にし、海沿いの集落を走っていると空家や、廃車のまま放置された旅館のバスなどが目に入ってきます。

海岸沿いを歩くと誰もいない家屋と壊れた漁船がそのままに残されていました。どんな人がここに住んでいて、どんな理由でこの島を去ることになったのか… そんなことを考えつつ、晴れてきた気持ちのよい空と心地よい海風の中でのんびりとした時間をしばらく過ごしました。

過去の痕跡。都会とは違い、離島では残されたものがそのまま朽ちていくことが許されているのです。


僕らの島生活
日本は7000近くの島で形作られ、本州などを除く離島のうち約400島に人が暮らしています。海に囲まれた小宇宙のようなコミュニティに残った独自性 は、画一的な大量消費から多様性が重視される時代の変化の中で魅力を増しています。離島をただ旅をするのではなく、島に生きる同世代の男性を訪ねてさまざ まな島の姿を紹介していきます。

美谷 広海(みたに・ひろうみ)
1975年フランス生まれ。小学校は富山、中高をギリシャで過ごす。引っ越し歴14回。大学在学中に佐渡島で能を演じる高校生を取材し、飛騨高山ドキュメンタリー映像祭入賞。2006年8月からブログ「世界を巡るFool on the Web」を開始。現在、IT企業の国際展開を担当。世界各地を転々としながら創作活動を続ける村上春樹的ワークスタイルが目標。


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