管理職になりたがらない男性が増えているという。「君もいつまでも今のポジションでいいわけはけないだろう」。前回、乙女男子の小林さんが上司から仕事に対するモチベーションが低いと断定される場面があった。男度100%の価値観に染まった上司にすれば、仕事が出来る部下を引き上げたいと思うもの。しかし、そこには男は出世を望んでいると決め付ける発想のワナがある。乙女男子は出世には関心がないのだ。

中堅広告代理店で営業を担当する小林さんは真面目な人柄で、与えられた業務もクリエイティブに実行出来る人材である。にもかかわらず、上昇志向や欲がないことが、部長には物足りなく映るのだ。このような指導を受けるのは、部長から目をかけられていることの証拠。小林さんは、その期待に気付いているが、プロジェクトリーダーや課長になりたいという出世願望は一切ない。

より正確にいえば、仕事を「地位」ではなく、「役割」として見ているので、「偉くなる」という発想が限りなくゼロに近い。部下を率いてビジネスの課題を解決する、時には会社のピンチを救って、いつかは社長に… 課長・島耕作のような男性像に憧れはない。それよりも管理職になって忙しくなり、ケーキを食べに行ったり服を探したりする趣味の時間が減るほうが心配なのだ。

管理職を希望しない男性はひそかに広がっている。東京都では2001年から「希望降任制度」を導入しており、将来を嘱望されていた課長が、自らの希望で主任に降格する事例も出ている。公立小中高校の校長や教頭にも「希望降任制度」があり、2006年度には84人が利用した。だが、民間会社では、社員の降格を認めるようなケースはほとんどなく、出世階段を登っていくという一方通行が「普通」と考えられている。

小林さんは、指導の後に休憩室に駆け込むと静かに泣き始める。部長との間に横たわるギャップの存在に対して、どうしようもなく悲しくなり、自然と涙が落ちてくるのである。乙女男子は、涙を流すことを厭わない。他人にその姿を隠そうとも思わない。泣きたい時に泣くことが、自然なのだ。

泣くことは感情表現の一つであり「男の涙」も珍しいものではない。
数年前の韓流スターブームの際も、男優の泣いている姿が「かっこいい」と話題になったが、「男が涙を見せるものではない」という男性自身の見栄や、「女々しくてちょっとみっともない」という女性の意見も日本では根強く残っている。しかし、感情によって流された涙は、ストレスを感じて発生するACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンを多く含んでいる上に、ロイシン・エンケファリンという物質が気分を落ち着かせる役割を果たしているという研究結果もある。つまり、泣くことは、ストレスを発散して心身を自然な状態に戻す自浄作用の効果がある。涙を我慢するよりも、泣くほうが合理的なのだ。

気分が落ち着いた後は、何事もなかったように業務に戻る。気分の切り替えが早いことも、乙女男子たるゆえんである。
 
 

乙女男子研究所
カワイイもの、オイシイもの、ファンシーなもの大好きな「乙女男子」が増えている!?当研究所では、「男らしさ」に縛られない新しい男子のライフスタイルを社会・文化と絡めつつ探求して参ります。

ふじい りょう(Parsley)
1976年東京都生まれ。埼玉の団地育ち。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物」らしく』にてメディア、カルチャー、ネット情報を題材に運営している乙女男子。好きな食べ物はプリン。ハマっているのは『桜蘭高校ホスト部』。 


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