昨年末、男性用ブラジャー「メンズプレミアムブラ」が話題になった。楽天市場に出店している下着・インナー専門店『ウィッシュルーム』が販売しているメンズ・インナーで、楽天市場の「その他」部門で五週連続ランキング1位を獲得するなど好調な売れ行きを見せ、さまざまなニュースサイトでも取り上げられた。同店サイトのキャッチコピーには「体は大人だけど…気持ちは乙女な男子!」とあり、乙女男子研究所としては無視出来ない現象だ。

男性用ブラジャーを販売するサイトでは、「やさしくなれるんです。安心できるのです」と、気持ちの面での変化があることを強調している。ユーザーによるレビューでも「リラックスアイテムとして購入した」という投稿が寄せられている。
ブラによる「優しさ」効果はあるのだろうか。日常的にブラジャーを着用する女性たちにヒアリングしてみると、着用することにより気持ちにやさしさが生まれる、といった効果は皆無だという。

ブラジャーは、体型を維持するための補正用のコルセットから派生した。下着メーカートリンプは、1886年にドイツで創業した際にコルセットの製造からスタート。身体を締め付け感が強いコルセットから、ガードルへと移行していったのが、20世紀初頭のこと。参政権運動など、女性の権利拡大の運動とも重なり、より動きやすく開放的な下着が望まれるようになったとされている。
フランスでは19世紀から「ブラシェール(ブラジャーのフランス語読み)」があったが、爆発的に広がったのは1910年代のアメリカから。現在のような女性の体型に合わせるブラは、1942年に実業家で映画制作者のハワード・ヒューズがハリウッド女優ジェーン・ラッセルのためにデザインしたものが最初。日本では、1949年にワコールが「ブラパット」の取り扱いをはじめ、50年代に洋装の普及とともに広まった。

以来、各メーカーとも、いかに楽に、軽く、体型を維持し、形をよく見せるか、という研究を進めて現在に至っている。「夢見るブラ」「天使のブラ」などカワイイキャッチコピーが目立つものの、「補正」という役割は基本的には変わっていない。そこに、精神的な「やさしさ」「安心さ」が入ってくる余裕は、あまりないように見えるのだが…

この連載の第一回に、菅野文氏原作の少女コミック『乙男(オトメン)』の条件について紹介した。それをここで再び引用する。

1、 乙女的趣味、考えを持つ若い男性
2、 料理、裁縫など家事全般に才を発揮する若い男性。
3、 乙女な心を持ちつつ、男らしさを兼ね備えた若い男性。

つまり、本当の乙女男子ならば、生来やさしさを持ち合わせており、女性用とされてきた下着を着用する必要はないのではないだろうか、というのがこの現象を乙女男子的な観点から見た結論だ。
ただ、仮にブラを着用することにより、乙女男子としての気持ちが芽生えるきっかけになることがないとも限らない。

いずれにしても、今回の事例は社会全体の乙女化の一端と捉えることは出来そうだ。
歩くだけでシェイプアップになるというワコールの「クロスウォーカー」が、女性用から男性用も販売されるようになったように、今後、女性向きのモノと考えられがちの商品のメンズ化が進むことは、充分に予想される。「男性用ブラなんて、ありえない」と笑っていると、貴重な商機を失うことにもなりそうだ。
 
 

乙女男子研究所
カワイイもの、オイシイもの、ファンシーなもの大好きな「乙女男子」が増えている!?当研究所では、「男らしさ」に縛られない新しい男子のライフスタイルを社会・文化と絡めつつ探求して参ります。

ふじい りょう(Parsley)
1976年東京都生まれ。埼玉の団地育ち。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物」らしく』にてメディア、カルチャー、ネット情報を題材に運営している乙女男子。好きな食べ物はプリン。ハマっているのは『桜蘭高校ホスト部』。 


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