第42回サントリー学芸賞(サントリー文化財団主催)の贈呈式が先月15日、都内であった。今回は、受賞者8人中、女性が5人と初めて過半数を占めた。芸術・文学部門では、女性の芸術活動を掘り起こした女性研究者による2冊が受賞した。

 戦後日本の前衛芸術運動において女性芸術家が果たした役割をとらえ直した『アンチ・アクション』(ブリュッケ)で受賞した中嶋泉・大阪大学准教授は、草間彌生や田中敦子、福島秀子らを事例に、1950年代から60年代にかけての戦後美術史の書き換えを目指した。「図書館の床に座り込んで当時の美術雑誌を一枚ずつ地道にめくる」日々だったという中嶋さんは、「フェミニズム美術史は周縁的なテーマだが、この分野の今後のために本当によかった」と喜んだ。「敗戦等で男性的覇権が弱まったときに、数十年サイクルで女性が注目を浴びる。ブームで終わらせないように研究を継続したい」と歴史的視点を披露し、意気込みを見せた。

 李賢晙(イヒョンジュン)・小樽商科大学准教授の著書『「東洋」を踊る崔承喜(チェスンヒ)』(勉誠出版)は、朝鮮半島出身の女性舞踊家の実証研究が評価された。戦前に日本・朝鮮で川端康成ら当時の知識層に絶賛され、戦後は北朝鮮に渡った。李さんは、帝国と植民地、芸術と商業、民族の伝統と近代化が複雑に交差する時代を生きた崔を「東アジアの近現代史そのものを背負い、戦後は忘れられた巨人、伝説の舞姫」とみる。資料探しの苦労を振り返り、今後も当時の世界公演の記録などを追い続けると誓っていた。(大内悟史)=朝日新聞2021年1月6日掲載