お話を聞いた⼈中村翔子(なかむら・しょうこ)童話作家

大阪生まれ。絵本出版社勤務を経てフリーに。作品に『まよなかのおならたいかい』『まよなかのくしゃみたいかい』『まよなかのいびきたいかい』(いずれもPHP研究所)、『笑顔の明日にむかって』(あかね書房)、『きしわだのだんじりまつり』(リーブル)など。

朝から晩まで一人しりとり

――しりとりは、子どもたちが大好きな遊び。でも好きすぎて、料理もしりとりの順番通りに出さないと怒りだす、そんな王様を描いたのが『しりとりのだいすきなおうさま』(鈴木出版)だ。表紙の絵から既にしりとりが始まっていて、「次は何だ!」とどなりつける王様に、けらいたちはどんな仕返しを考えるのか? 遊び心たっぷりの絵本の文を担当した中村翔子さんは最初、一日中しりとりばかりしていたという。

 絵本は、書いている時間よりも、構想を練る時間が長いんですよ。だからうちの子どもに「ママはいつ仕事してるの?」って言われますね。この本を作ったときは、朝から晩まで一人でしりとりしていました。王様がプリンを食べる姿はかわいいなと思って、最後の言葉が「プリン」というのは、決めていたんです。それで最後から始めたんですけど、これがなかなかつながらないので、やっぱり最初から考えて……と結構苦労しました。途中で、プリンに行く前に「ン」がついてしまって怒られるシーンもあって、これは「ラーメン」か「うどん」か「そうめん」か……と候補をあげて、そこにつながるようにずっとしりとりしていました。

 はたこうしろう先生の描いた絵から、しりとりを想像するのもこの本のおもしろさです。「ココア」のところは、「コーヒー」や「紅茶」と捉えてしまう子どももいるようで、次がアスパラだからここはココアだよって大人が誘導することもあります。でも次の「アスパラ」の絵に、付け合わせでトマトがのっているんですよ! 最後のオチにトマトを使う予定だし、混乱するかなと思って、トマトを取ってほしいってはた先生にお願いしたら、「彩り的にトマトは残したい!」と先生。結局クレームひとつこなかったので、そんな心配をしなくても大丈夫だったんでしょう(笑)。

『しりとりのだいすきなおうさま』(鈴木出版)より

 けらいたちが台所で料理を作る場面も見どころです。目玉焼き1つを作るのにも、けらいがタマゴ割りの失敗ばかりしていて、おもしろいんです。プリンを早く作っちゃってしょんぼりしているけらいは絶対入れてほしいと思っていました。裏表紙には、プリンをもらって仲直りしている王様とけらいの様子が描かれていて、表紙から裏表紙まで、遊び心が満載の絵本なので、たくさん楽しんでもらえるのではと思っています。

『しりとりのだいすきなおうさま』(鈴木出版)より

ペープサートや人形劇にも

――言葉遊びを活用したこの本は、家庭での読み聞かせを超えて、いろいろな遊びへと展開されている。幼稚園や小学校での勤務経験がある中村さんは、保育の場面でもあったらいいなと思える本を作りたかったという。

 園でこの絵本を読んだ後、先生がお題を出して、しりとり遊びをしてくださることは多いようです。もともと、言葉に興味を持つ時期だからこそ、いろんな遊びに展開できればいいなと思っていました。遊びながらいろんなことが覚えられるので、「お勉強」という感じがしなくていいかなと思って作っています。

 この本を題材に、地域の図書館やイベントなどで、ペープサート(紙人形劇)や人形劇にして演じてくださったお話も聞きます。許諾申請が来ると、記念としてCDや写真を送ってもらうのですが、みなさん作り物がすごく上手なんですよ。よくここまで再現してくれたなというものは結構あります。

 子どもたちが実際に劇遊びをしているものもありますね。いまのご時世、王様役は5人ぐらいいて、みんなで「しりとりの通りに出せー!」と言っているのを見るのはほほえましかったです。ただしりとりするだけじゃなくて、演じてみるって子どもにとってもおもしろいですよね。

学校や図書館で、絵本が劇やペープサートにアレンジされている

 私も講演の最後に、この絵本を読んでくださいと言われることがあります。オチのところでは、最後の最後に「トマト、トースト、トマト、トースト、トマト……!!」と息が続かなくなるまで早口で言い続けるんです。そうするとすごく受けるんですよ。それを聞いた毎日放送のアナウンサーの方が、同じように朗読してくれました。毎日放送は定期的に読み聞かせのイベントを開いていて、いろんな本を読んでくれるんですが、特に関岡香アナウンサーの朗読は絶品でしたね。間の取り方といい、朗読ってこんなふうに読むんだって感動しました。

――20年の月日が流れ、現在、続編を作っている最中だという中村さん。

 実は、『しりとりのだいすきなおうさま』の第2弾が進み始めていて、担当編集者から急かされているところです。もともと編集者だったので、昔はえらそうに「早く書いてくださいよ」なんて作家さんに言っていたのが、いまじゃ「すいません、ちょっと待ってください!」っていう逆の立場になってしまいました(笑)。まだタイトルも決まっていませんが、また楽しいしりとりでストーリーが展開していくものを、お届けできたら嬉しいです。