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お話を聞いた⼈光浦靖子(みつうら・やすこ)

1971年生まれ。愛知県出身。幼なじみの大久保佳代子と「オアシズ」を結成。バラエティ番組「めちゃ2イケてるッ!」(フジテレビ系)のレギュラーなどで活躍。また、手芸作家・文筆家としても活動し、著書に『靖子の夢』(スイッチパブリッシング)、『傷なめクロニクル』(講談社)など。

コロナ前から、ずっと迷っていた

――光浦さんは今年、50歳。一つの節目として捉えていますか。

 うーん、なんだろうな、「そういう流れに自然となった」って感じですね。別に「50歳になったら何かするぞ」ってやっていなかった。何が評価されるかもわからんしね。状況や環境が変わっていくから、わからない。こっちが何か能動的にやっている感じはないですよね。

――文筆業・能町みね子さんが、「今、光浦さんメチャクチャ格好良いよね」と話していました。

 こんなこと、1回もなかったんです。初めてです。嬉しい。今こそ「稼ぎどき」じゃないですか。日本に残ってテレビに出て、いっぱい稼げるじゃん、私(笑)。今こそCMとか出ておかないと。何だよう!

――エッセイの最終章では、英会話教室の10歳年下の生徒さんが、こう言いますね。「仕事に繋がろうが、繋がるまいが、いい経験にしかならないじゃないですか!」。今、下の世代から、光浦さんの生き方に注目が集まっています。好感度爆上がり中ですよ。

 今こそ働いてお金ほしいー(笑)。好感度はずっとゼロだと思っていました。こんなに身を尽くし頑張ってきて、否定しかされない。そこでずっと腐っていたけど、腐りももうなくなって、何て言うのかな、期待をしなくなったと言っちゃいかんけど、「皆のアイドル」になりたかったのに、なれなかったから、もう、そこをクヨクヨしても、しゃあないと思ったんです。そうしたら、急にラクになりましたね。人気者になりたいし、人気者にならなきゃ、とか、すごく変なプレッシャー。もう、どうでもええわ、と思って。

初めて書いた「相方」

――「めちゃイケ!」の頃は、切磋琢磨する芸人に揉まれ、そこで悩んでおられているのかな、って、テレビ画面越しに拝見していました。

 あそこ(「めちゃイケ!」)が拾ってくれて、この世界に入れた。今、すべての仕事があそこから始まっているから、「結果オーライ」ですけど、やっぱり、何かね、自分とフィットしないところが多々あって、ずっと苦しかったですね。楽しかったし、全部学ばせてもらって。難しいよねえ。何とも言えないね。感謝しかないですけど、「よくも、あのつらい二十数年を乗り越えたな」と、ホント褒めてあげたいよ、自分を。

――共演の加藤浩次さんが「スッキリ!」(日本テレビ系)でMCをする姿を見て、「こんな朝早くから加藤さんも頑張っているんだから」と自分を奮起させるそうですね。

 毎回、戒めています。「加藤さんはもう働いているぞ!」って。でも最近は、「だから豪邸建てただろ」って、自分で言ってもう1回寝る(笑)。「だからまだ私はアパート住まい。それで良いや」って。

――それを例えば、先輩芸人で大の仲良しである清水ミチコさんに相談したりするのですか。

 しないなあ。清水さん、レールは揺らぐことはないと思うので。清水さんは、テレビにもう出なくたってライブでちゃんと集客できる人だから。普段はグループLINEで、(後輩芸人の)森三中・黒沢(かずこさん)、たんぽぽ・白鳥(久美子)さんとやり取りしています。黒沢、泣き言ばっかり言ってきて、白鳥さんが慰めているの。だけど、考えてみたら、(妊娠中の)白鳥さんの胎教に良くないなと思って。私とか黒沢の愚痴を毎日聞いて、とんでもない子が生まれたらどうしよう。私たちの悪いものを吸い取らせてしまって、お子さんの第一声が「腹立つー!」だったらどうしよう!(笑)

――「オアシズ」相方・大久保佳代子さんのことについても書いていますね。ここまでハッキリと記したのは……。

 初めてだと思う。うん。どうせカナダに行くし。(ネットで騒がれようとも)、ネットの人なんか、1週間黙っていたら静かになるって人から聞いたんで。「海外行っちゃうから、バレないから良いや」って。

 私たちは結局、仕事のパートナーにはなれませんでした。元々、仲良しで始めたこと。お笑い好きな大久保さんと会う口実が欲しくて、媚びるようにお笑いサークルに入らない? と誘ったのが大元のきっかけです。私が先に売れ、大久保さんが後に売れ、足並みが揃ったことがなくて、揃えようとするとなんだか互いが疎ましくなって、どちらからともなく気づいたんです。一緒に売れる必要はない、と。友達のまんまでいいんじゃない? と。たまーに、コンビでゲストに出ると楽しかったりします。(『50歳になりまして』より)

日々をもうちょっと緩く、クスクス笑いたい人に

『私が作って私がときめく自家発電ブローチ集』光浦靖子著(文藝春秋)より

――エッセイと同時刊行の「ブローチ」の作品集。あまりにも精密で、人柄が滲み出てくる。たとえば、バービーさん。「バービーらしさ」がそのまま出ていますね。

 あ、そう? バービーのこれは「かっこいい顔」になっちゃったよね。バービーの優しい、面白い顔っていうよりも、バービーのちょっとクールな感じになっちゃって。かっこいいほうの。

――最近のバービーさんの路線ですよね。

 そうそう。コメディアンバービーではなくて。

――創作中、どんなことを考えているんですか。

 「早く顔が見たいなあ」って。本当に。「その人が出てこないかなあ」っていう。なかなか出てこないんですよ。出てこない人は、3日も4日も出てこない。何が違うのかわからないけど、違うんですよ。微妙な位置なんですよね。作っていて思ったのは、やっぱり肉眼で見た人の方が作りやすいです。写真とか映像だけでは作りにくい。

――立体感、質感、あと、何なら湿気まで漂ってきますね。

 あははは。

――大久保さんの型紙付き。

 大久保さんは、初期の頃の作品で、ほぼペラッとしていて。絵に近いもので、作れるように作り方も載っていますけど、今のスキルで作ったら、もっと「リアル大久保さん」が作れると思う。

――どちらの本も、気持ちが塞ぎ、生きづらさを感じている人たちに寄り添いますね。

 でも、「指南書」みたいなもんじゃないので、読んだとして、プラスになるわけじゃないしね。何だろうね、なんか、小さくクスクス笑いたい人に読んでほしいかな。日々をもうちょっと緩く、みたいな、そういうことが好きな人。大爆笑が好きな人より、クスクス笑うことが好きな人に楽しんで欲しいなあ。

――心機一転、私も何か違うことやってみようかな。

 あ、別に、芸能界を辞めるわけじゃないですからね。ちょっと1年、勉強したいだけ。なんか、皆、別の職業に就くような感じに捉えられてしまう。あんまり大きな話にされると、「何かを成し遂げんといかん」みたいな空気になっちゃう。芸能界は、仕事があれば普通に続けるからね。まるで転職するみたいに書いちゃダメですよ!