「アンチレイシストであるためには」 [著]イブラム・X・ケンディ

 「人種差別? 私は肌の色など気にしない」――これが現代のアメリカではレイシズム(人種差別)とされる。というと大方の人はポカンとするかもしれない。
 しかしトランプ前大統領も「わたしほどレイシストからほど遠い人間もいない」と言い張り、それが封じられることはなかった。
 その論理のどこがどう誤っているかを、若手の人種関係史家が自身に即して懇切に説くのが本書である。
 高校時代に弁論大会に出た著者は、キング牧師を引用しながら黒人の若者が無気力に沈む姿をたしなめて叱咤(しった)した。聴衆は大喝采。しかし約20年後のいま、思い出すと自分の欺瞞(ぎまん)に「空恐ろしくなる」という。
 現在「制度的差別」と認識されつつある社会環境自体の歪(ゆが)みに目を向けず、自己責任論で黒人が黒人を非難する。公民権運動世代からオバマ元大統領にも共通したこの説教の何がおかしいのか。「多様性」の前で立ちすくむ日本社会にも示唆の大きな本である。