「野生のごちそう」 [著]ジーナ・レイ・ラ・サーヴァ

 文明と自然の領域が接近し、境界は曖昧(あいまい)になった。動植物の自然の生態系に介入する人類。本書は野生の食材というテーマから環境問題を掘り下げる一冊だ。
 著者は、有名レストランで蟻(あり)が口内ではぜるのを感じ、コンゴ民主共和国でチンパンジー肉の闇取引を目撃し、スウェーデンではヘラジカに舌鼓を打つ。そうした身体を張った食レポの本当の意図とは、穀物の安定大量生産と動物の効率的な家畜化により食糧事情を安定させながら、なぜまた狩猟動物(ジビエ)料理を欲し、野生植物を求めるのかという人間の存在への問い直しだ。例えばウミガメのスープには、貴重な栄養源だった時代から、植民地への西欧諸国の支配力誇示に至る、長い人類の歴史が滋味となり凝縮されているという。
 神話までさかのぼる広い視点と膨大な知識に加え、自身の恋愛事情も赤裸々に盛りこむ親密さも、本書の魅力。野生食材の救済は人類の遺産の回復との著者の言葉は、説得力がある。