お話を聞いた⼈はらぺこめがねイラストレーター、絵本作家

1983年徳島県生まれの原田しんや、82年大阪府生まれの関かおりによる夫婦イラストユニット。どちらも2005年、京都精華大学デザイン学科卒業後、グラフィックデザイナーを経て08年にイラストレーターとして独立。11年、はらぺこめがねを結成し、「食べ物と人」をテーマに活動を続ける。主な絵本に『かんぱい よっぱらい』(岩崎書店)、『ごはん山』(白泉社)、『はらぺこサンタのクリスマス』(ほるぷ出版)などがある。

DJみそしるとMCごはん(通称:おみそはん、みそちゃん)

1989年、静岡県生まれ。女子栄養大学卒業。「おいしいものは人類の奇跡だ!」をモットーに、トラック、リリック、アートワーク、ミュージックビデオなどすべてを自ら制作し、料理と音楽の新たな楽しみ方を提案する、くいしんぼうヒップホッパー。2013年、メジャーデビュー。NHK Eテレ「ごちそんぐDJ」に出演中。絵本に『みよこ たまごのなかのひみつ』『となりのおやつ ザクのフレンチトースト/なめのフルーツサラダ』(いずれも神宮館)がある。

顔がお皿の奇想天外なキャラクター

―― 舞台はスパゲッティ屋さん。お客さんたちは、自分の注文が来るのを今か今かと待っています。ナポリタンにボンゴレ、納豆、イカスミ……おいしそうなスパゲッティが続々と登場。DJみそしるとMCごはんさんの歌に、はらぺこめがねさんが絵を付けた、食欲を刺激する絵本です。制作はどのように進められたのでしょうか。

はらぺこめがね 原田しんや(以下、原田):まず僕がスパゲッティをテーマにしようと提案しました。『やきそばばんばん』で麺を一本一本描くのがすごく大変だったので、麺類はしばらくいいかなと思ってたんですけど、『チキンライスがいく。』(あかね書房)をはさんで回復したのか、スパゲッティが描きたくなってきて。『スパゲッティのうた』というタイトルもそのときに思いつきました。

スパゲッティは家でもよく作るので、身近な食べ物なんです。ソースでいろいろ変化する感じを、みそちゃんと一緒だったら楽しく絵本にできるかなと。

DJみそしるとMCごはん(以下、おみそはん):お題が決まったので、私はすぐに歌を作り始めました。喫茶店で一気に書いて、メロディと後ろのトラックもつけて、こんな方向でどうですか?とLINEで送ったんです。

DJみそしるとMCごはん

はらぺこめがね 関かおり(以下、関):すごく早かったよね。

おみそはん:そのときは1番が男の子、2番が女の子みたいに、主人公が途中で変わる歌だったんですけど、絵本にしたときのわかりやすさを考えて、絵本では1番だけにしました。

―― お客さんは全員、顔がお皿です。

おみそはん:お皿の顔は衝撃でしたね。このキャラはなかなかない。

関:スパゲッティを作る人や食べる人じゃなくて、スパゲッティ自体を主役にしたいなと思ったところで、合体させたらいいやんってひらめいたんです。そうしたら、ずっとおいしそうな絵を出せるなと。

『スパゲッティのうた』(あかね書房より)

原田:ちょっと奇想天外にもしたかったというのもあったんじゃないかな。

関:コックさんやお店の雰囲気は、よく行くお気に入りのスパゲッティ屋さんをモデルに描きました。お客さんもそれぞれイメージはあって、たとえばイカスミとナポリタンは、イカスミがお父さんでナポリタンがわんぱくな子ども。ママ抜きでパパと外食に来たという設定です。

「はらぺこめがね」の原田しんやさん、関かおりさん

アサリの温泉からいい香り

―― おみそはんさんは、制作の上でどんなことを心がけましたか。

おみそはん:なるべく文章だけでも映像が浮かぶようにしたいなと思ってましたね。ボンゴレの「シャバダバ いいゆだ」は、ほかほかのアサリの温泉から、湯気とともにいい香りが漂ってくる様子を想像しました。ナポリタンは、ケチャップを焦がすと色が濃くなって、甘みが増しておいしくなるので、その様子を夕陽に喩えてみたり。絵が圧倒的においしそうなんですけど、言葉でもおいしさをプラスできたらいいなと思いながら書きました。

原田:料理のイメージがしっかりあるからこそ書ける文章ですよね。「ゆうやけナポリタン」なんてすごくいいフレーズで、そのままメニューになりそう。

文章の上につけられたオリジナルの絵記号は、DJみそしるとMCごはんさんが考案。巻末には絵記号対応表も。『スパゲッティのうた』(あかね書房より)

おみそはん:いつもはそんなに歌詞をしつこく修正しないんですけど、今回は最後まで細かく直しました。絵を見てから微調整したりもしましたね。

一番こだわったのは、サビのフレーズ「からみつかせて にがさない いまだ ちゅるちゅる すいこめ オーエス! オーエス!」。最初は普通に「ぐるぐるひきよせて……」みたいな感じだったんですけど、せっかくならもっと、今までスパゲッティに対してあまり使われてこなかったような表現にしたいと思って。

「食べてやるぞ!」と意気込んで、口の周りを真っ赤に汚しながらスパゲッティと格闘している子どもの姿を思い浮かべて書きました。

―― 原田さんは毎回、実際に調理したものを撮影してから絵を描き始めるそうですが、今回もすべてのスパゲッティを作ったのですか。

原田:歌詞を思い浮かべながら、全部作りました。ナポリタンは、ケチャップをじりじり焦がして……炒めすぎると茶色っぽくなってしまうので、「ゆうやけナポリタン」になるように気をつけました。

アトリエの隅のキッチンで実際に調理してから描く

「アサリのおんせん」は、お皿にスープがたまっている感じが温泉なのかなと思ってたんですけど、実際に作ってみたら、アサリの殻にオイルがたまってる感じも温泉だなと気づきました。

最後に出てくる主人公が何スパゲッティなのか、歌詞には出てこないんですけど、ここはやっぱり王道のミートソースかなと。大学時代からずっと作っている得意のレシピで、じっくり煮込んだミートソースをもとに描いています。

―― おみそはんさんは『スパゲッティのうた』の絵を見てどう思われましたか。

おみそはん:ラフの段階からちょこちょこ見せてもらってたんですけど、原画を見たときは、すごい! はらぺこ節炸裂!!って思いました。スパゲッティは躍動感があるし、お皿のキャラはかわいいし、カラフルだし。

ナポリタン、ボンゴレ、イカスミなど、メニューは延々とパスタの名前を言い合う会議を経て決めた。『スパゲッティのうた』(あかね書房より)

新ユニット「ぺこみそ」を結成

―― はらぺこめがねのお二人と、おみそはんさんのお付き合いはいつからですか。

原田:みそちゃんのCD「ごちそんぐDJの音楽」(2017年発売)のジャケットを描かせてもらったのがきっかけですね。

おみそはん:女子栄養大学に通っていたとき、研究室にはらぺこめがねさんの絵本『すきやき』(ニジノ絵本屋)があって、すごく好きだったんです。それで、ジャケットを描いてほしいとお願いしました。

関:「ごちそんぐDJ」を見て一方的に知っているつもりだったので、声をかけてもらえてうれしかったです。

おみそはん:初めてお会いしたのは、打ち合わせでアトリエにお邪魔したとき。私はわりと人見知りなんですけど、食べ物をテーマに活動しているという共通項があるからか、お二人とはすんなり打ち解けられた気がします。

原田:僕らも人見知りなんですけど、みそちゃんとはすぐに意気投合しました。プライベートでも、アトリエでごはんを作ってもらったりしてね。『チキンライスがいく。』が出たときには、帯コメントを書いてもらいました。

関:原画展のトークイベントにも登場してもらって。その打ち上げで、次は一緒に絵本を作ろうって話になったんです。

―― 2組の共作絵本ですが、「作・ぺこみそ」としたのはなぜですか。

原田:『スパゲッティのうた』は企画の段階から一緒に考えてきたので、文・みそちゃん、絵・はらぺこめがねと分けて載せるより、ユニット名をつけた方がしっくり来るなと思ったんです。「ぺこみそ」という名前は、僕の思いつき。それぞれの名前の一部をくっつけただけの単純な名前ですけど、響きがかわいいなと思って。3人でやりとりしているLINEグループの名前も「ぺこみそ」なんですよ。

―― 「ぺこみそ」としての今後のご予定は?

おみそはん:近いうちに『スパゲッティのうた』のミュージックビデオを撮って、私のYoutubeチャンネル「」で公開予定です。はらぺこめがねさんのアトリエで、原田さんにスパゲッティを作ってもらいながら歌おうかなと。絵本と一緒に楽しんでもらえたらと思います。

原田:絵本第2弾もやりたいですね。他にも食べ物をテーマに、絵本以外でも何か楽しいことができたらいいなと思っています。