「雇用形態間格差の制度分析」 [著]禿あや美

 朝から晩まで会社に拘束され、急な転勤を言い渡される正社員。正社員と同じ仕事なのに、著しく待遇が劣る非正社員。どちらも疲弊する日本の雇用システムは、なぜ変わらないのか。
 この問いを解き明かすために、著者は電機産業・小売業の数社を緻密(ちみつ)に調査した。正社員と、パートタイム労働者などの非正社員とで、職務がどう分担され、待遇改善がいかに図られてきたか。ジェンダー視点を含めて考察し、問題の本質をつかみ出す。
 パートタイムの制度は、1970年代前後に各社で取り入れられた。年功賃金による正社員の給与体系では人件費がかさむ。地域相場を基準とした賃金体系を設け、景気変動の調整弁としたのである。主たる担い手は既婚女性だった。
 だが、景気の悪化にともない、パート労働者の職務は拡大し続ける。発注・管理などの責任ある職務を担うようになり、正社員との差異がなくなった。
 そうなると、正社員とパートの格差が改めて問題となる。職務では差がつかない以上、拘束時間の長さや転勤といった無限定な働き方が、正社員の証しとなった。パート労働者の待遇の低さと正社員の過重労働とは、表裏一体の関係にある。格差を温存したまま、働き方の違いで公平性を保つのではなく、ジェンダーや雇用形態にかかわらず、職務を基準に待遇が決まる制度に変えていく必要がある。
 そのためには、「職務とは何か」を根本から問い直すことが不可欠だと著者は説く。仕事と責任、待遇について、この社会は何を当たり前とし、何を不問に付しているか。この議論なくして、同一価値労働同一賃金は実現できないだろう。
 本書の分析は、淡々とした筆致で進む。だがその行間からは、長時間労働で蝕(むしば)まれる身体、理不尽な格差に軋(きし)む感情までもが伝わってくる。これが持続可能な社会といえるのか。著者の問いかけは、働く人の痛みに基づいている。
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かむろ・あやみ 跡見学園女子大教授(社会政策)。論文に「雇用・労働における『自己決定』の確立へ」など。