日産自動車への危機対応融資(約1800億円)、ANAホールディングスへの劣後ローン供与(約1300億円)、西武鉄道・プリンスホテルへの優先株引き受け(約400億円)検討など、経営不振に喘ぐ大企業の駆け込み寺となっている金融機関がある。日本政策投資銀行(渡辺一社長)だ。

 2008年に設立された政投銀は、政府が100%株式を保有する政府系金融機関。当初は12〜14年を目途に完全民営化する予定だったが、東日本大震災に伴う危機対応などもあって、15年に民営化を5〜7年後まで先送りすることとなった。ただ、「今回のコロナ対応で完全民営化は更に先送りされそう」(メガバンク幹部)というのが金融界の共通した見方だ。


※写真はイメージ ©iStock.com

 人事の面でも政府の影響は色濃い。歴代トップには長年、旧大蔵省時代から事務次官経験者らが天下ってきた。ただ、民営化を睨んで、15年に柳正憲氏が初の生え抜き社長に就任。現在の渡辺社長はプロパー2代目で、「東大卒で登山が趣味。実務家肌の人物」(政投銀関係者)との評が専らだ。しかし、行内で実権を握るのは「元財務次官で、代表取締役会長の木下康司氏」(同前)だという。

 日産への巨額融資においても、木下氏の存在感は際立つ。総額1800億円のうち1300億円について、焦げ付いた場合に日本政策金融公庫が最大8割を肩代わりする事実上の政府保証が付いていたことが物議を醸したが、「木下氏と財務省同期で、同じく次官まで登り詰めた田中一穂・政策金融公庫総裁の間で話が進んだ」(同前)という。

 だが、投融資先企業の再建は容易なことではない。「政投銀の融資には『優先弁済』が付与されるケースが多く、債権放棄となった場合、金融機関の足並みを乱す要素になりかねない」(前出・メガバンク幹部)と懸念の声も挙がっている。