都内から4時間弱の意外な近さ…紀伊半島のターミナル「和歌山」には何がある? から続く

 電車の座席は、いつのときも垂涎の的である。

 始発駅などで繰り広げられる座席争奪戦などはもう大都市のターミナルではおなじみの光景になっている。通勤電車で自分の目の前に座っている人が立ち上がるそぶりを見せたら胸が高鳴る。満員電車の中でひとつだけぽかりと空いた座席はひときわ輝いて見える。たったひとつの座席があれほど多くの人の羨望の目に晒されるのは、通勤電車の中をおいて他にない。

 別に通勤電車でなくても似たようなものだ。新幹線や特急列車の座席は、旅の気分を高めてくれるツールのひとつ。ゆったりと腰掛けて、後ろの人に気遣いながらちょっとばかりリクライニング。テーブルを倒して弁当なんぞを広げて……。乗車時間が長めの新幹線の旅、その座席は目的地に着くまでのほんのひととき、自分だけの“城”なのである。

 と、まあそんなわけで、鉄道車両の中にある座席は、ただのイスとは違う特別な存在といっていい。座り心地とかそういうものを超越しているのだ。

“電車のイス”は確かに人気ですが…

 だから、というとさすがにムリがあるが、鉄道車両のイスは意外とあちこちで売られている。その多くは鉄道ファンがこぞって買い求めるような、古い車両で使われていた廃品の類い。もう使わなくなったよ、というものを何かしらのイベントなどで鉄道ファンに販売する、といった具合だ。

 だが、今回取材することになったのは、それとはまったく異質な“電車のイス”だという。


 

 そのイスを製造・販売するのはJR西日本グループ。JR西日本鉄道本部イノベーション本部の豊島正浩さんは、「鉄道ファンに、というのを超えて一般の人に広く受け入れてもらいたい。ひとつのブランドとして、大切に使っていただける。そんな家具にしていきたいと思っています」と話す。

 その家具とは——ただ鉄道車両で使われていたそのままのイスではなく、観光列車「WEST EXPRESS 銀河」のオマージュ家具。つまり、「WEST EXPRESS 銀河」の中で使われているイスやらテーブルやらをベースにしつつ、普通に家庭でも使えるようにアレンジした家具、というわけだ。その点において、これまでの鉄道車両の廃品の類いの座席とは一線を画しているのだろうということがわかる。いったい、どのようなものなのか。