アカデミー賞で主要4部門を制した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」。ポン・ジュノ監督は授賞式後の会見で、「『パラサイト』は最も韓国的なものでぎっしり詰まっていて、かえってそれが全世界の人々を魅了したのはないかと思う」と語った。

 監督の言葉通り、本作は韓国社会のリアルな姿を通して世界に蔓延する格差問題と階層間の対立を描き出して世界から共感された。しかし、作品の中に描かれている韓国独特の事情については、若干の説明が必要かもしれない。韓国国外の観客が疑問に思ったであろうポイントを解説してみたい。(*以下の記事では、映画の内容が述べられていますのでご注意ください)


『パラサイト 半地下の家族』 © 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

疑問1 主人公の家族が暮らしている半地下の家賃はいくら?

 主人公の一家は、大黒柱の父・ギテク(ソン・ガンホ)をはじめ、家族全員が無職。彼らの貧困な暮らしを物語っているのが「半地下部屋」だ。

 撮影に使われた半地下部屋は、ソウル近郊のスタジオに作られたセットだ。ギテクの家族が住む町もやはりセットで、そこに実際のソウルの庶民層が住む町の映像をCGでつなぎ合わせたものだという。

 ところで、実際にあの半地下部屋を借りると、家賃はいくらだろうか? 

 韓国の様々な不動産サイトによると、ソウル市であの家族のような、半地下で部屋が3つある住居を賃貸する場合、「保証金1千万ウォン(約93万円)+毎月30〜50万ウォン(約2万8千円〜4万7千円)前後」が必要となる。保証金は日本の敷金と同じように、基本的には退去時に全額返却される。

 韓国では、半地下部屋以外にも「住居貧困層」に分類される住居がある。

 一つは「屋根部屋」だ。屋上に建てた仮設住宅で、韓流ドラマによく登場する。韓流ドラマではソウル市内の夜景が見下ろせるロマンチックな場所として描かれるが、実際には夏は暑く冬は寒い、上水施設や暖房施設も劣悪だ。

 もう一つは「考試院」。大学街や塾街でよくみかける受験生向けの貸し部屋のことだ。日本で言うと寮を連想させるような狭い部屋が集まっている住居だ。考試院は住宅ではなく、「近隣生活施設」に分類されるために、住宅法の影響を受けない。そのため、10平方メートル以下のワンルームが多く、窓がなかったり、部屋の真ん中に柱があったりする部屋もある。

 韓国では、地下部屋・半地下部屋、屋根部屋、考試院などに居住する世帯は「住居貧困層」に分類される。それぞれ頭文字をとって「地屋考(チオッコ)」とも呼ばれるが、「地獄の苦み(チオッコ)」と発音が同じで悲惨さが感じられるネーミングだ。