金が無くなれば「おい、ちょっと200万ほど振り込んで」

 Xが売春島に関わっていたのは、こうして逮捕されるまでの2年弱。塀のなかでの生活と引き換えに、億に迫るカネを手にした。

「繰り返すけど、稼ぎの半分は女のコの取り分になる決まり。でも当時、女のコが店からもらえたのは2〜3000円だったと思うよ。で、俺は、そんなわずかなカネも貯めさせ、ある程度貯まったところで送金させていた。俺は酷い男で、女のコらには可哀想なことしたと謝罪の気持ちもあるんだけど、そうして根こそぎ奪っていた」

 カネは、クミがチーママになった以降、彼女がみんなの分を預かり、Xの本妻の通帳に振り込ませていたという。最盛期には、ホテルのスイートルームに泊まりっぱなし。金が無くなれば「おい、ちょっと200万ほど振り込んでくれ」と、電話一本。派手な生活だったと、Xは当時のバブルを懐かしむ。

「そこには多くの犠牲者がいた……」

 男は、こちらが話し終らないうちに、それを遮るように言葉を被せた。犠牲者という表現だけは違うとばかりに。

「あのね、置屋は管理売春で捕まっているけど、別に俺は『管理してね』とか『無理矢理売春させてくれ』とか言って島に女を送っていたわけじゃないんだ。単にカネが欲しかっただけで。だから『逃げたら責任取ります』なんて話はまったくしない。そこまで責任負えないから。あくまで俺は、『女を紹介するから200万円のバンスをさせてくれ』と交渉しているだけだから。

 つまり女を送った後はもう、全ては置屋の責任だと思っている。女が200万円の前借りをして、俺はその女から200万円をもらっていた。店から直接、カネはもらってない。

 だから俺は裁判で争った。それなら有害業務の斡旋には当たらないでしょう、と。

 当初は警察も納得してくれていた。でも後に置屋のババアが『直接渡したことがある』と、余計なことを言ったから起訴されたんだ」

「そこには裏取引があったと思っているのですね」

「そう。管理売春での起訴を逃れるために俺を売ったと思っている。結果、ババアと女将は不起訴になっているからね」