『炎』(LiSA)/『FIRE SCREAM』(水樹奈々)


絵=安斎 肇

 LiSAというからm-floかと思い込んでいたら、時は移ろうものである。今どきのLiSAは、アニソンの売れっ子シンガーなのだった。

 私はそのあたりには本当に相当疎いのでよく分かっていないことだらけなのだが、アニソンの売れ行きとは番組の評判と必ずリンクするものなのか、はたまた楽曲だけが一人歩きをすることや歌手人気でチャートが盛り上がりを見せたりといったことはあるものなのか? アニソンじゃなくてもアニソンシンガーが評価されたりすることはあるのか? いやいや、俺がどのぐらいアニメを知らない人間なのか。何よりの証拠は『鬼滅の刃』ってのをどう読むのか、さっき調べるまで分かんなかった。それに尽きるわ(笑)。さて『炎』であります。ちなみにルビは“ほむら”です。今話をした大ヒットアニメの主題歌だ。ちなみに、私も昔『炎』のタイトルで桐島かれんに一曲書きましたけど。こっちは“ほのお”ですけど。アルバム名は『ディスコ桐島』であります。検索してねェ!

 おっとっと。また脱線だぁ。


炎/LiSA(Sony Music)「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」主題歌。公開3日で興行収入46億円を超え、その人気ぶりが社会現象に。

 今回『炎』を聴いてあらためて気づかされたのがLiSAのノドのことだった。これは系譜として松田聖子というのはあるな、と思ったのである。

 聴き手の耳に訴えかけてくるものに含まれる、甘さと強さの混合具合のバランスとでもいえばいいのか、発声発音から発揮される楽器的音響の特性は松田聖子に近いように、私には感じられたのである。

 ではLiSAの芸風は松田聖子と似ているのかといわれると、それはまた微妙だ。聴いてもそうは感じない人は多いだろう。

 松田聖子の歌唱には、一種聴き手の心をザワつかせる/ハラハラさせるような、いわば内面から来る“危険性”があった。スリリングなところが歌手として強力な武器だったのである。

 LiSAの魅力/説得力とは、それとはまさに正反対のものといっていい、すなわちその誇るところとは、最終的かつ絶対的な安定性/安全性だからだ。音域にしろ符割りにしろ、如何ほど難易度が高かろうが、与えられた旋律は易々とこなしてみせる。カラオケの女王的な――数値に変換しやすい――アスリート的技術職としての能力の高さなのである。発露のベクトルは全く異なるだろう。

 彼女ら“アニソン歌い”に対しては、松田聖子に代表される“アイドル的存在”に対するほどには、誰も“実体の味”すなわち人生の浮き沈みや人間性のようなものは、興味として求めたりはしないのではないだろうか?

 そう考えてみると、生身の人間の演じるわけでもないアニメというものに登場するキャラたちを愛するのと、アニソンシンガーを愛でることの間には、たしかに通底するものはありそうな気もしてくるが、紙幅も尽きてきた。その辺は、また今度考えますね。


FIRE SCREAM/水樹奈々(KING RECORDS)人気スマートフォンゲーム「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED」の新主題歌。

 水樹奈々。

 これまた難易度高い。技術点は9.999超え! だね。

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト〜世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

(近田 春夫/週刊文春 2020年11月5日号)