『暴動チャイル〈BO CHILE〉』(ザ・クロマニヨンズ)/『アカシア』(BUMP OF CHICKEN)


絵=安斎 肇

 クロマニヨンズの新曲は、前に出ていたウルフルズの曲と全く同じタイトルだが、別もののようだ。一応念のため。

 とりあえずネットに動画でも出ていないかと思い探すと、尺が46秒と書かれている点が気にはなったが、オフィシャルとあるからには本人たちの演奏に違いない。これをとりあえずチェックすることに。

 すると、バンドの演奏シーンと思しき絵で、乾いた音色のドラムスにブルースハープ(ハーモニカ)が絡み、ベースとギターが入ると、アメリカ南部の匂いのするアップテンポのロックンロールが始まった。と思いきやその辺りで46秒。歌は聴けずのまま映像は幕切れとなった(勿論、その後CDで聴きました)。

 クロマニヨンズというと、ついつい甲本ヒロトの声に耳が行きがちなところがある。それが今回ここで俺が聴けたのはインストルメンタルの部分のみという、これが体験として、逆に妙に新鮮だった。

 つまり、変ないい方になるが、結果あの声に惑わされることなく“演奏家”としてのクロマニヨンズというものを知ることとなったからである。

 いや、率直にいってその感想をひとことで申せば、大変に素晴らしかった。それに尽きるとも思うが、さらに付け加えるなら、これは息の合ったメンバーを擁するバンドにしか出せぬ音だということだ。


暴動チャイル〈BO CHILE〉/ザ・クロマニヨンズ(Sony Music)甲本ヒロト、真島昌利、小林勝、桐田勝治からなるロックバンド。2006年結成。

 ここで“息”とは、演奏時に於ける“タイム感”のことで、それはいわゆる“リズム感”とはまた違うパラメータである。一番分かりやすいのが、「手を締める」ときの、いょ〜っ、からポンまでの間(ま)だろう。一般的に、リズムがテンポ(数値的一定)を伴うものだとすれば、こちらにはそれは――それこそ三三七拍子の、後半にゆくに従っての拍子の自然な加速などを思い起こしていただければご理解いただけるだろう――ない。あくまで「阿吽」なのである。その、生理的な心地よさは“リズム”では説明がつかぬ。

 そうした文脈に於いて、このクロマニヨンズのプレイには、数値(デジタル)ではなかなか表し難い、極々僅かな揺らぎといってもよい、絶妙な間合いの応酬の連続がみられるのだ。その情報の豊かさがたまらない。

 そしてそれこそ、メンバー同士の職人としての、また人間としての信頼なくしては実現の難しいものなのだということは、私もバンド経験は決して短くないゆえ、よく分かる。こんな音をぶつけ合えるメンバーで結成されたバンドは、本当に幸せだと思った。

 歌を聴けなかった分、耳が楽器に集中出来たといったが、なかでも一番の収穫は、甲本ヒロトのハープである。曲冒頭のドラムスとのフィジカルな丁々発止の、スリルに満ち溢れながらも曖昧な箇所の1ミリもないバトルには、本当に、B'zのライブでの、稲葉浩志のハープに接して以来の興奮を覚えた。そうだ! クロマニヨンズとB'zでジョイントやってくんないかなぁ。絶対金払って観にいくから!


アカシア/BUMP OF CHICKEN(TOY'S FACTORY)作詞・作曲:藤原基央。「ポケットモンスター」とコラボしたMV「GOTCHA!」が話題に。

 BUMP OF CHICKEN。

 ま、普通ですかねぇ。

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト〜世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

(近田 春夫/週刊文春 2020年11月26日号)