本当の「痛くない死に方」とは

 悔恨の看取りから2年後、信念を新たにした河田医師は成長している。ここで登場する2人目の末期がん患者・本多は、明るくチャーミングなキャラクター。演じるのは宇崎竜童だ。

 本多は「平穏死5つの要件」の3つめにある“楽しみや笑いがある「穏やかな生活」”を自ら求めていて、毎日の暮らしに楽しみを見つけるのがうまい人物だ。イベントを好み、妻を愛し、ユーモラスな川柳を詠む。本多を見ていれば「こうして暮らせばいいのだな」という感覚が沁みてくる。

 しかし、そんな本多にも、やはり死は近づいてくる。

 終末期にはどんな変化が起こり、家族はどう判断すればいいのか。頼れる医師として成長した河田は、どう指示を出すのか。家族にも患者本人にも、一点の曇りもない「痛くない死」というものは存在するのだろうか。そのあたりも、ぜひ劇場で見届けてほしい。

 本作はタイトル通り、どうしたら「痛くない死に方」ができるかを紐解いた、知識溢れる貴重な作品だが、もちろん劇映画としても秀逸だ。高橋伴明監督の手腕とキャストの力によって、最後まで目が離せない、娯楽性の高い感動的な作品に仕上がっている。

ドキュメンタリー映画『けったいな町医者』も公開

 劇映画『痛くない死に方』の原作は、現役で町医者として市民の治療にあたっている長尾和宏医師の書籍だが、その長尾医師自身の在宅医療の現場を収めたドキュメンタリー映画『けったいな町医者』も、2月13日から公開となる。こちらは長尾医師と患者、そして家族のリアルな物語の記録だ。

 こちらの作品の監督は、劇映画『痛くない死に方』で助監督を務めた毛利安孝。多くの患者さんのリアルで貴重な「命の瀬戸際」が映っており、控えめに言っても衝撃的なドキュメンタリー作品だ。ナレーションは柄本佑が担当している。

 奇跡のような患者さんたちの反応、そして「在宅医療はどうあるべきか」を長尾医師が熱く語る場面も見どころ。患者やその家族から深く信頼される長尾医師の人柄や、確固たる信念をしっかり伝えながらも、その「けったいな町医者」ぶりに、つい笑ってしまうシーンも収められている。

 さて、記事後編では長尾医師本人にインタビューを行った。痛くない死に方(=平穏死)をより深く理解してもらうためにも「ドキュメンタリーと、劇映画『痛くない死に方』の両方を観てほしい」という長尾医師から、映画の裏話や在宅医療についてのお話をうかがった。( 後編 に続く)

INFORMATION

『痛くない死に方』映画情報
2021年2月20日よりシネスイッチ銀座ほかにて順次公開
出演:柄本佑、坂井真紀、余貴美子、
大谷直子、宇崎竜童、奥田瑛二 ほか
監督・脚本:高橋伴明
原作・医療監修:長尾和宏
『痛い在宅医』『痛くない死に方』(ともに、ブックマン社)
配給・宣伝:渋谷プロダクション
https://itakunaishinikata.com/  
©️「痛くない死に方」製作委員会

INFORMATION

『けったいな町医者』映画情報
2021年2月13日よりシネスイッチ銀座ほかにて順次公開
主演:長尾和宏
ナレーション:柄本佑
監督・撮影・編集:毛利安孝
配給・宣伝:渋谷プロダクション
https://itakunaishinikata.com/kettainamachiisha/
©️「けったいな町医者」製作委員会

在宅医療のスペシャリスト・長尾和宏医師が語る“平穏死”「死について考えるのは、前向きに生きるということ」 へ続く

(市川 はるひ)