ある時は、ベランダで植物を育てることが生きがいの男、ある時はトランスジェンダーの主人公が勤めるバーのママ――。変幻自在に役柄を演じ切るのが、個性派俳優・田口トモロヲだ。近年は俳優業のみならず、ナレーターや映画監督としても活躍している。

 いまや日本の映画界において欠かせない存在ともいえる田口。一方で、多くの出演作ではいわゆる主演としての登場ではなく、バイプレイヤー、すなわち名脇役としての活躍を見せている。では、数百本を超える作品キャリアの中で、田口はどのようにして存在感を増していったのか。彼が考える「脇役論」について語ってもらった。


 

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脇役は「観る人の視点を多様にしてくれる」存在

――4月には映画『バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜』が公開になりました。「脇役」と言うには申し訳ないほどの役者さんたちが出演されていますが、田口さんにとっての“俳優”とはどういうお仕事なのでしょうか?

田口 正直、わからないですよね(笑)。わからないからこそ、ずっと続けて来ているのかな…とも思います。あえて言葉で言うとしたら、演出家の要望にきちっと応えて、なおかつ自身の個性も出せる人なのかな。

――映画では通常、「主役の主観」で物語が進みます。そんな中で、田口さんが多く演じてこられた「脇役」という役柄が持つ意味は、どういうところにあるのでしょう。

田口 主人公の目線で見る世界って、非常にストレートでメインストリートなんです。でも、脇役から見る世界ってオルタナティブなものでしょう。脇役の立場に立って目線を変えてみると、そこにはすごく豊かで多様な世界が広がっている。そう考えると、脇役って観る人の“視点を多様にしてくれる存在”なんだと思います。

――これまで学生の自主制作映画から大御所監督の作品まで、様々なジャンルの映画に出演されていますが、田口さんが出演作品を選ぶ基準はどこにあるんですか?

田口 僕の場合はまず、脚本ありきなんです。脚本に心惹かれるか、その中に描かれている人物が面白く感じられるか。俳優って、現場では身も心も裸にならなきゃいけない。スタッフも共演者も含めてまったく相手を知らない場合だと、どうなるのか本当に怖いんですよ。そういう中で共通点や、新しい冒険を見出せるのが脚本なんです。