コロナでウンザリするような空気が続くが、季節はいつも通り巡り、すっかり春。花が咲き、風が暖かく感じると、聴きたくなる声や音楽がある。

 菊池桃子がまさにその一人だ。

 最近では自身のYouTubeラジオ「今日もお疲れさまです」で、Adoの大ヒット曲「うっせぇわ」のカバーを歌い、「全然うるさくない」と話題になっている桃子。なるほど、全然うるさくない。「うっせぇわ」という言葉さえやさしい。怒り突き放す言葉がここまで似合わない人も珍しいと思った。

 この動画の聞きどころは「うっせえわ」のカバーでなく、菊池桃子の語り。「うっせえわ」の曲紹介も「とっても素敵な曲で、とっても迫力のある曲で……」と、ひたすらかわいい。そこから彼女の声と合わない「うっせえわ」を聴いた反動もあり、猛烈に「青春のいじわる」から全盛期のヒット曲を聴きたくなった。そんな人は多かろう。

 桃子のウィスパーボイスは神様からの贈り物。怒りより、やさしさと四季と宇宙が似合う。

桃子の声が最高にクール!

 さて、そんな菊池桃子ソングで今ものすごく遅れてきたマイブームなのが1988年、彼女を中心に結成したロックバンド、ラ・ムーの曲である。

 当時、デビュー曲「愛は心の仕事です」を初めて歌番組で聴いたときは戸惑った。声量があるとはいえない彼女が、ダンスをしながらロックを歌うというギャップ。そして桃子より100倍歌が上手そうなバックコーラスを従えていたこともやはり戸惑った。今、新垣結衣がロックデビューしたくらいのサプライズと例えれば、当時の衝撃がわかっていただけるだろうか。


菊池桃子さん ©時事通信社

 しかしこれ、約30年の時を超えて今聴くとものすごくいいのである。

「愛は心の仕事です」以外にも「少年は天使を殺す」「Rainy Night Lady」などすこぶる名曲揃いで、桃子の声が最高にクール! 特にCD音源は加工もスタイリッシュで、近未来的なメロディーと、とても相性のいい歌唱と気づかされる。彼女のアイドル歌手時代を知らない人のほうが先入観がないので、曲を楽しめるかもしれない。

 動画のコメントでも、再評価する内容がとても多い。サブスクで解禁されたら、回り回ってブームが来そうな気もする。

歌ってみて初めてわかる凄さ

 このように、単純に「ヘタ」と思い込んでいたアイドルの評価が、時を経てガラリと変わる、そんなことがよくある。

 特にカラオケで歌ってみると、そのアイドルが意外に難しい歌を歌っていた、もしくは実は凄い表現力と声だったと知ることが多い。菊池桃子と田原俊彦は、まさにその最たる例。