3つ目は第37話(5巻に収録)。

 妻・美久が出張で、帰ってくるのは翌日の夜。家を出ようとする彼女から「たまにはゆっくりしててよ」と言葉を掛けられて、龍は「ゆっくり…そーかゆっくりか」とニヤつく。晴天だがシーツを洗わず、干さず、ファブリーズをぶっかけまくる。洗濯物は一枚ずつ畳むなんてせず、ハンガーに掛けたままクローゼットに放り込む。お昼は何も作らずに、カップラーメンをすする。そこへ元舎弟・雅が訪ね、ゆっくりしているという龍に付き合うと言う。ふたりしてジェンガやテレビゲームに興じ、昼寝をするはずが、洗い物や風呂掃除がどうしても気になって離脱したがる龍。そんな彼を逃さまいと目を光らせる雅。

たまには家事をショートカットしてもいい

 仕事に関してはそうでもないが、数年前までは家事になると「手を抜いちゃいけない」「とにかく、なんかやらなきゃ」と考え込んでしまう性格だった。だが、なんにせよ、やりすぎや考え過ぎは心身を摩耗させ、疲労させる。どうせ同じ結果が出るなら、ショートカット使ったほうがいいでしょ。そう考えるようになり、食洗機を導入し、乾燥機でタオルや部屋着を乾かし終わったら、そのまま引っ張り出して使って着る日もある。最近は風呂の排水口の掃除が面倒で、粉をぶっかけて水を注ぐだけでピカピカになる「強力カビハイター排水口スッキリ粉末発泡タイプ」を積極的に使っている。それでも「手を抜いちゃいけない」と頭によぎることもあるが、綺麗になった排水口を眺めるとそんな考えも洗い流される。

 主夫、主婦、単身者を問わず、楽できるなら楽をしたほうがいいに決まっている。それで出来た時間で自身を休めたり、家族と向き合うことに使ったほうがいい。主夫業は大変だが、ことさら苦行にすることはない。そんなことを龍と雅に教わった気がする。

龍からの叱咤激励をもとめて

 と、ここまで書いておいてなんだが、俺は料理が出来ない。いや、出来ないのではなく、やろうとしていない。結婚する前からGLOBALの包丁や柳宗理のボールセットを買っており、料理する気は存分にあったのだが道具を揃えるだけで満足してしまう。結婚してからは妻がやってくれるものだから、そのまま甘えてしまっている。その代わりに掃除と洗濯を担当しているが、それを踏まえたとしても「主夫です」とは言えない身分だ。

 去年の第一回緊急事態宣言を受けて外出や保育園の登園を自粛している時に、「ちょっと料理してみるか」と“ぎょうざの満洲”で売っている「業務用冷凍生ぎょうざ(60個入りで税込¥1,290)」を焼いてみたが、熱した油が腕に跳ねて一気に心が折れた。あれから1年、その間に餃子を焼いたのは数えるのみ。油の跳ねが怖いし、水を入れたり、また油を入れたりするのが面倒でフェードアウト。だったらと、水餃子に挑んでみたが湯切りに失敗、親指にお湯を掛けて火傷して、また心が折れた。

 自分の家なのに、台所に向かわないのはいかがなものか。そんな自分を変えてくれる龍からの叱咤激励のあるエピソードを探そうと、今日も俺は『極主夫道』のページをめくる。

「もう一度聞くけど、職業は?」妻に弁当を届けただけなのに…警察が専業主夫の男を呼び止めた“納得の理由” へ続く

(平田 裕介)