30歳になる前後には、仕事が減った時期もあったようだ。安達はその原因を、自分の見た目と実年齢と、結婚して母親になったという現実とのちぐはぐさゆえ、出演依頼する側もそれ相応の役をつけづらくなったのだろうと考えた。ここから、まずこちらから変わっていかないと、世間のイメージを変えていくことはできないと思い立ち、所属事務所の人たちと話し合いを重ねる。それによって仕事の選び方も変わっていったという。そして、新しいことをする前には、一回、いままでの安達祐実像を壊すことが必要だということになり、その起爆剤として映画『花宵道中』に主演する(※3)。それはちょうど芸能生活30周年を迎える節目、2014年のことだった。

遊女役で「濡れ場」を熱演

 宮木あや子の同名小説が原作の『花宵道中』で安達が演じたのは、朝霧という江戸時代の遊女だ。朝霧は遊女であることを当たり前のように受け入れていたが、偶然出会った染物職人と恋に落ち、やがて悲しい末路をたどることになる。純愛ストーリーとはいえ、遊女の物語だけに、ヌードや濡れ場のシーンもあった。それでも彼女は、《女優として変わっていかなきゃいけない時期だと感じていましたし、今の自分ならその役に挑戦することで起きる賛否両論の反応すべてを受け止める準備があると思ったので、演じることを決め》たという(※4)。

『花宵道中』が公開された年には、写真家の桑島智輝と再婚するという転機も迎えた。馴れ初めは、写真集 『私生活』(集英社) を制作したときである。20代の終わりから2年半にわたって撮影が行われたその写真集で、彼女は演技は一切やめ、毛穴も目の下のクマも修正せず、素の姿をさらけ出した。桑島は結婚してからも安達を毎日撮り続け、一昨年と昨年には、その一部をまとめた写真集 『我我(がが)』 『我我旅行』 (いずれも青幻舎)が夫妻の共著として刊行された。そこでは妊娠、出産し、授乳する姿なども含め、彼女の私生活がまったく飾り気なしに淡々と記録されている。

 昨年には、深夜ドラマ『捨ててよ、安達さん。』(テレビ東京系)に本人役で主演した。ただ、自分自身の役は、ほかのどのキャラクターを演じるよりも難しかったという。