現在、金曜日深夜の「ドラマ25」枠で放送中の向井理主演ドラマ『先生のおとりよせ』がとても面白い。話も面白いが、向井理そのものが吹っ切れた感があり面白い。

 近年彼が演じたキャラクターを抜粋し挙げてみても、九尾の妖狐に身体を乗っ取られた陰陽師、父と対立する大金持ちの長男、土方歳三、いきなり姿を消す取締役社長、婚活に失敗しまくる探偵、結婚式に乱入する謎の男――。大暴れである。

「ヒロインの人生を変える上司」というハマり役

 舞台に映画、ドラマ、いずれかを見ればどこかに向井理の姿在り。そして今クールも『先生のおとりよせ』と『悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜』の2作に出演中だ。向井理って、こんな柔軟な俳優さんだったのか!と今更ながら感動しつつ観ている。

 演じる役はバラエティに富んでいるが、「知的」というパブリックイメージは揺るぎない。出世作『のだめカンタービレ』(2006年)で演じたチェリスト菊池役からずっと滲み出続けているエリートオーラ。ちなみにこの「のだめ」では、彼とオーボエの黒木役、福士誠治はまだ無名だったが、原作マンガのファンも納得のハマリ具合。一気に注目度を上げた。

 30代を過ぎると、アイドル的に騒がれた俳優ほど高い壁にぶつかるというが、向井理はここもすんなりクリアしている。和装もスーツも似合うスタイル、知的な佇まい、甘いルックス。加えて数段高いところから世の中を見るような上から目線を感じる個性は、主人公の人生を左右する上司・年上ポジションでガッツリ存在感が際立っている。

 その一つが「憧れ路線」。現在放送中の『悪女(わる)』では、主人公が憧れるT・O(田村収)役を演じているが、これはまさに彼の王道といえるだろう。「そりゃひと目惚れもするさ」と思えるシュッとしたビジネスマンぶりはお見事である。

冷ややかな魅力を活かした“ドS路線”

 もう一つが、隙の無いムードを逆利用した「ドS路線」。過去、彼の冷ややかな魅力が最高に生かされたのが『きみが心に棲みついた』(2018年)の星名役である。吉岡里帆演じるヒロイン今日子を精神的に操り、薄笑いを浮かべる演技は本当に恐ろしかった。

 あの役の印象が強烈で、しばらくは彼が上司役で登場すると、「ドラマ後半で闇落ちする」と疑ってしまった。『わたし、定時で帰ります。』(2019年)の種田、『着飾る恋には理由があって』(2021年)の葉山、どちらもいつ主人公を裏切るのかと構えながら見守ったものである。

 ところが、そんな向井のオレ様イメージを一転させるサプライズが2022年の冬に届いた。BSテレ東のドラマ『婚活探偵』の探偵・黒崎役である。